●監視側の監視で議論を

 与党は衆院採決の目安となる審議時間を「約30時間」としている。国会には重要法案の審議時間は100時間超、一般的な法案は30時間程度といった目安がある。だが、日本の刑法の体系を根底から変える法案の審議が、はたして30時間で十分と言えるのか。しかも、金田勝年法務相の国会答弁が混乱を招いていることで、審議の中身が充実していたとは言い難い。5月17日には野党4党から不信任決議案が提出された(18日に否決)。早川氏は「金田法相には酷だ」と語る。

 共謀罪のような専門的な法案は、法曹資格を持った人間が時間をかけて勉強する必要がある。法相ともなれば、野党から指摘された問題の本質を理解した上で、適切な法案解釈をした答弁が求められます。ただ、刑事司法の現場に通じていない国会議員にそれを求めること自体に無理がある。金田法相だけを責めるのは違う。

 私は、日本も国際組織犯罪防止条約を締結して、国際社会と連携してテロ対策を講じるべきだと考えており、この法案も必要という立場です。だからこそ、国会会期を大幅延長するか、あるいは今国会での成立を見送り、次期国会に継続審議とするなどして、きちんと審議を尽くすべきだと思っています。

 日本維新の会が取り調べの可視化や弁護士の立ち会いを求める修正案を出しましたが、こうした「監視する側を監視する方法」についての議論も幅広くされるべきです。共謀罪は捜査当局にとって大きな武器になることは間違いない。議論が不十分なまま、法案を成立させてはなりません。

(編集部・作田裕史、澤田晃宏)

AERA 2017年5月29日号

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