「安定したパフォーマンスを発揮するためには、常にコンディションや体のキレを保つことが必要だと感じています。」(※写真はイメージ)
「安定したパフォーマンスを発揮するためには、常にコンディションや体のキレを保つことが必要だと感じています。」(※写真はイメージ)
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 独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。

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 4月8日第28節フライブルク戦から、90分間出場する試合が続きました。第32節ハンブルガーSV戦は87分でピッチを退きましたが、先発・フル出場がこれほど続くのは、昨季にも経験のなかったことでした。

 サッカーで1人の選手が1試合に走る距離は、十数キロメートルだといわれています。時速24キロメートル以上でダッシュをする「スプリント」の回数は約20本。もちろん試合展開やポジションによっても変わりますが、ブンデスリーガは平均してこれらの数値が高いリーグで、局面が激しい上に、プレースピードや攻守の切り替えが速いのも特徴です。その中で安定したパフォーマンスを発揮するためには、常にコンディションや体のキレを保つことが必要だと感じています。

 以前に、「1日に3リットルの水を飲め」という指示を受けていると話しましたが、ドイツの選手はとにかくたくさん水を飲みます。汗のかき方も違うのか、その分、頻繁に「トイレ」にも行っています。体格差だけでなく、改めて、体の「つくり」そのものも違うのだなと感じます。日本人の僕が、この激しいリーグを戦い抜くためには、チームのトレーニングだけでは「明らかに足りない」と気づき、自分なりのトレーニングでカバーすることを心がけています。

 もともと、けがをした時に、弱い部分を補うことを目的として、本格的にフィジカルトレーナーに付いて学んできましたが、現在でもチーム練習後には、必ず30分間のランニングをしています。家に帰ってからは、10キログラムのお米の袋を抱えておもり代わりにしたり、足首にチューブを巻いたりして、柔軟性を高め、筋肉を強くするトレーニングを日々続けています。

 1部残留を争う厳しい試合が続き、チームには少なからず疲労感もありますが、僕自身は、この自主トレをやらなければ「気持ち悪い」と感じるようになりました(笑)。「誰よりも努力をしている」という自負は精神的にも自らを支え、試合で「あと一歩、もうひと踏ん張り」の力となってくれるのでしょう。

(構成/藤原夕)

武藤嘉紀(むとう・よしのり)
1992年7月生まれ。東京都世田谷区出身。慶應義塾大学経済学部卒業。大学在籍時からFC東京でプレー。2014年にはJリーグで13得点、日本代表に選ばれた。翌15年、Jリーグファーストステージで10得点と活躍し、これを置き土産にドイツ・マインツへと移籍。1年目はリーグ7得点を挙げた。

AERA 2017年5月22日号