利用料金は導入台数によって変動するが、1台あたり月に6千円から1万円程度。

「オムツは最終手段。なるべくトイレでしたいという気持ちに沿えるように、排泄ケアの業務を下支えする機器として展開していきたい。まずは一度試してみてほしい」(中西さん)

 脱オムツ、自立排泄を応援する姿勢は、オムツを製造するメーカーにも共通するものだ。

 例えば、ユニ・チャームが1995年に発売したリハビリパンツという紙パンツ。80年代まで「被介護者は寝て過ごすほうがいい」と考えられていたが、そうではなくトイレに行くことがリハビリになる、という考えが、商品とともに普及した。

●ポジティブになれた

 ここまでは「介護向け」のオムツ市場だが、実は、「自分向け」のオムツ市場もある。12年には赤ちゃん向け市場と大人向け市場が逆転したと言われるが、特に伸び率が高いのはこの「自分向け使用者」の市場なのだ。60代を中心とした軽度失禁、尿モレケア市場。

 介護の「脱オムツ」の方向性とは逆に、こちらは積極的に製品を使う人が増えている。

 ユニ・チャームグローバルマーケティング本部の石橋正樹さんが説明する。

「使用するまでは抵抗感があったが使ったらポジティブになれた、という声を多く聞きます。閉じこもるより、外出して好きなことをしたいというアクティブシニア層のニーズがある」

 製品には心理的抵抗を減らすための工夫が随所にある。「オムツとは呼ばせません」と石橋さんが言うように、商品名は
「すっきりスタイルパンツ」、あくまで「下着」だ。パッケージには若々しい男女の写真。ズボンにラインが響かないことまで考慮されている。

「60代、70代で尿モレが起きると、4人に1人は週5日以上家から出ない、閉じこもり傾向になるというデータがある。閉じこもることは認知症の入り口と言われています。尿モレを気にせず、外出することの重要性を呼びかけています」(石橋さん)

 何も「脱オムツ」を頑なに目指す必要もない。目的は、より長く、自分らしい人生を楽しむこと。そのための手段は確実に増えている。(編集部・高橋有紀)

AERA 2017年5月15日号