


いい言葉を聞いたことがない。「少子高齢化」「福祉の縮小」「年金消滅」……。私たちの老後は本当に真っ暗なのか。このまま、ひたすら下流老人化を恐れる人生でいいのか。どこかに突破口はあるはずだ。「年を取るのは怖いですか?」――AERA5月15日号は老後の不安に向き合う現場を総力取材。
老後を考えるとき、排泄はかなり切実な問題だ。「オムツだけはしたくない」と考える人がほとんどだろう。だが超高齢社会のニッポン。オムツ市場は拡大する一方だという。やはり避けられないことなのか。
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オムツに「する」ことがこんなに難しいことだとは。
覚悟を決めてはいてみたその夜。寝たきりの状態を体験するためにベッドでしてみようかとも思ったが、万が一の事態を考えると勇気がなく、お風呂場に移動した。尿意はあるのだが、不思議なもので、トイレ以外の場所で「いざ排泄」しようとしてもなかなか出ない。
あれ? おしっこって、どうやって出すんだっけ?
そんなことを生まれて初めて(たぶん)考えつつ、下腹部に意識を集中させる。なんとか出してみると、いっきに股間に生温かさが広がった。もし介護される側だったら、介助者がくるまで交換してもらえないはずだ。10分ぐらいそのまま待ってみようと決めていたが、ムレが気持ち悪くてしょうがない。さっさと外してシャワーを浴び、トイレに行った。さっきしたばかりだが、あらためてトイレでしてみると、ほっとして自分を取り戻したような気すらしてくる。
なるほど、これが「排泄は最後のプライド」「自立排泄が人間の尊厳を支える」といわれるゆえんか。
排泄ケアの世界で、いま画期的な機器が登場しつつある。
「10分後にうんこが出ます」
迫り来る便意を予測する、そんなデバイスが目下開発中だ。
●排泄は予測できる
トリプル・ダブリュー・ジャパンの排泄予知ウェアラブルDFree(ディーフリー)は、代表の中西敦士さん(33)が、留学中に大便を漏らした体験が開発のきっかけだ。Dはdiaper(オムツ)のD。つまり「オムツから人々を解放する」ことを意味する。
便検知タイプは開発中とのことだが、尿検知タイプはすでに利用が始まっている。