稲田朋美防衛大臣 (c)朝日新聞社
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「安倍首相ガンバレ」を叫ぶ子どもたち、教育勅語を朗唱させる幼稚園……。森友学園問題に端を発して「右翼」という人たちが、にわかにクローズアップされている。AERA 2017年5月1-8日号では「右傾化する日本」を大特集。深く、静かに進行していたこの社会の右傾化は、人びとのどのような思いから発しているのか、取材した。

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「今は国家の危機です」

 都内の某コーヒーチェーン店に、白須夏さん(50)の甲高い声が響く。白須さんが店を貸し切って開いたのは、いわゆる“婚活パーティー”だ。

 集まったのは男女約20人。サンドイッチをつまみながら自己紹介をしていく。それが終わればいよいよメインイベントのライブの始まりだ。心地よいギターの音色に合わせて、白須さんが口ずさむ。

「海ゆかば 水漬(みづ)く屍

 山ゆかば 草生(む)す屍」

 ギタリストが演奏したのは、軍歌「海ゆかば」だった。第2次世界大戦中、日本軍の玉砕を伝えるラジオ放送で流れていた歌だ。最近では、森友学園が経営する塚本幼稚園が園児に斉唱させていたことで話題になった。天皇のためにいつでも命を投げ出そう、決して後悔はしない、そんな兵士たちの思いが歌詞には書かれている。婚活イベントにはまったくふさわしくない選曲のように思うが、その心は?

「自分を犠牲にしてでも国家が大事だと思うよう意識改革したいんです。結婚しない、子どもを産まない、そんなふうに個人の権利を主張しすぎて日本はダメになった。だから家族を大切にする古き良き時代に戻したい。女性は専業主婦として家庭で輝くべきです。保育園なんて少子化に拍車をかけるだけだから増やしちゃダメ」(白須さん)

 白須さんは、約4万人の会員を抱え、安倍政権を支える右翼組織・日本会議(※注1)に所属している。目指すのは婚姻や両性の平等を定めた憲法24条(※注2)の改正だ。

商売保守じゃない

 祖父も父も自民党の地方議員という家庭に育ち、幼い頃から休日の庭に国旗を立てるのは白須さんの役割だった。小学生の頃、当時町長だった父親の政策に反対する日教組の教師たちが、父の名前を叫びながらデモをしているのを見て以来、左派には嫌悪感がある。

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