しかし、これでは仕事にならない分野があることは確かで、私のいたウォール街がまさにそうで、自らの立身出世、将来のために必死になって働いてもいいよ、という人がいます。実際ウォール街で本気で仕事をやれば24時間世界中のマーケットを相手にするわけです。それは法令違反になるのか、などと言い出したらきりがないわけです。
研究者なども同様で、最先端の論文を書くために徹夜しているのに、それが法令違反と言われても困ってしまいますよね。そういう人たちをとても厳しい労働法の基準から外すホワイトカラー・エグゼンプションというカテゴリーがアメリカには存在します。
この「24時間就業者」という立場を受け入れる代わりに、高い給料と将来の出世という果実を得ることができるのです。ですからウォール街と日本の金融機関の給与を比較することは根本的に間違いで、前者は「24時間就業者」ですから高くて当たり前。最低でも年収2500万円は取ることになります。
同じような仕事を年収800万円でさせようとするから問題になるわけで、要は終身雇用と年功序列を廃止してからでないと、議論が迷走することは確実。働き方改革は、まずこの慣習を法律でやめさせる以外にはない、というのが実情というところでしょう。
※AERA 2017年4月24日号