国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。
代わり映えしない電車が走り続けた国鉄時代から、数年に一度は新車が投入されるJR時代へ──。電車の移り変わりは、JRが駆け抜けてきた30年間の日本をそのままに映し出す。国鉄からJRに変わり、もっとも大きく変わったこととは?
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多くの子どもたちを鉄道の世界へと引き込んだ鉄道カメラマン、南正時さん(70)は、名うての「電車」好きでもある。
「故郷の福井県でずっと蒸気機関車を見てきた反動で、今でも新しくてかっこいい電車を見るとワクワクするんです。一番好きな被写体は新幹線ですね」
電車の中でも通勤電車は、日常に密着しすぎていて地味な存在。だが、国鉄からJRに変わり、最も大きく変わったのは通勤電車の進化のスピードだ。
国鉄時代はオレンジと緑の「湘南カラー」を定着させた80系などの名車があるが、魅力的な電車は「西高東低」だったと南さんは言う。1963年に登場した103系という電車が全国的に20年以上主力を占めたが、西では「新快速」用の117系がインパクトを与えた一方、首都圏では好みの電車を見られない状況が続いた。
JRに変わり、JR東日本をはじめ各社が競って名車を出すようになる。JR西日本だと2016年に登場した323系が「音も静かで評価しています」、JR東日本だと06年に登場したE233系が「広くてゆったり、乗り心地もいいし前面が丸みを帯びたデザインで撮っても楽しい」。JR九州なら89年登場の811系、JR北海道は寒冷地ならではのいかめしい顔をした731系や733系──南さんの言葉に力がこもる。
●長~く使わない電車
JR6社がそれぞれ個性的な通勤電車を開発し、日本の通勤風景は間違いなく変わった。彼らはどんな思いで通勤電車を開発しているのだろうか。
JR東日本鉄道事業本部運輸車両部の菊地隆寛次長(49)はこう語る。
「国鉄時代の列車は部品も含めて非常に規格化されており、変化に乏しい印象。新たな技術へのチャレンジも少なかったのではないかと思います。JRになり、乗客のニーズの変化に細かく対応できるようになりました」