●やらなきゃ「怠け者」
そこで、今回のアンケートでは、家事に給料が払われるとしたら月にいくらもらいたいか(または払うか)も質問。夫婦の場合、「お互いさまなので対価は求めない」と平等に評価する答えのほか、夫と妻に傾斜をつけて互いに数万円ずつ払い合うスタイル、「手取り30~40万円ほしい」と会社員のフルタイム勤務と同程度の評価を求める立場まで、さまざまだった。中には「お金をもらってもやりたくない」という人も。自分や家族が行う家事をどう評価するかは個人差がとても大きく、作業のレベルや頻度も違う。「逃げ恥」のように、それらをすり合わせることが、実は時間を要するわずらわしい作業になるのだ。
「家事をしない」選択を許さない風潮も苦しさを増大させる。特に女性への風当たりは強い。
「家事から解放されたいと思う人を、世間は『怠け者』と責めずに、もっと理解すべきです」
そう話すのは四国在住の契約社員の女性(48)だ。料理嫌いで、毎日、朝食はカロリーメイト。昼はスライスチーズと食パンと牛乳。夜は世間体のためだけに一汁二菜を作る。そのことは誰にも言わない。それどころか栄養士の資格まで取り、「できるけどやらない女」を装っている。そこまでするのは、家事一切は女の仕事とされてきた幼いころの記憶があるからだ。
●忙しすぎて限界
九州の田舎では、冠婚葬祭のたびに、本家の女衆が数日かけて掃除をして、数十人分の料理や飲み物の準備をした。当日は大皿に盛られたフルコースの手料理が食卓を埋め尽くす。一方で、大きな魚を引っ提げて登場した男たちは居間にどかっと座って酒を飲むだけだった。
「手間暇をかけることが真心だとされていて、料理を買うなんて許されない。まして料理嫌いなんて言えない。今はまだ、うまくバリアーを張って生きていくしかないんです」
「家事を上手にこなすのが女の鑑(かがみ)」。そんな価値観は、限られた条件のもとで成り立っていた専業主婦全盛期の遺産だ。誰もが忙しい一億総活躍時代。日本中の家庭から悲鳴が聞こえてくる。
「疲れた身体でお金をかけずに家事をしていくのは大変」
「思いつく家電をすべて導入しても日々を回すのが精いっぱい」
「忙しすぎて自分の体調の悪さにも気づかず、仕事納めの翌日に倒れた」
この大問題を解決する方法が、きっと何かあるはずだ。(編集部・金城珠代、福井洋平)
※AERA 2017年2月13日号