●問われるのは生存能力

高橋:野性としての直感力は、やはり田舎のほうが研ぎ澄まされますね。僕は、夏は雪駄(せった)かビーサンなんですが、鼻緒が切れて東京の街をはだしで歩いたことがあります。アスファルトは熱かったけれど、砂利はないし、すごく歩きやすかった。でも、もし道になにか障害物があって僕がつまずいたら、都会では責任問題に発展しますよね。田舎だと「つまずいたやつが悪い」。道はでこぼこで、そもそも人が歩きやすいようにはなっていないので。

安倍:そういう力は、どんな人にも備わっていたはずです。

高橋:閉ざされた一定の環境への適応力はたけているんだと思います。予定調和のなかで効率を追求してきたのが都市生活ですから。でも、その予定調和が崩れると、すぐに対応できなくなる。いわゆる「想定外」というやつです。

安倍:そうかもしれませんね。

高橋:想定外の最たるものが自然災害。災害に直面したとき、生きるか死ぬかの「生存能力」が今後は問われていくのでしょうね。

安倍:これからは、想定内のことならAIがすべてやってしまいますよね。「想定外」に対応できる力を人間はいかにつけていくか。そのためにも、自然との分断は、絶対に加速してはいけないと思いますね。

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2017年2月6日号