地球外生命体はいるのか世界最高性能の望遠鏡で天体観測──。南米チリにある「アルマ望遠鏡」では今、宇宙で生命を探る研究が進んでいる。
「天文学者は人が住めない大地を目指す」──。
国立天文台チリ観測所教授の井口聖さんはそう話す。天体観測には、酸素が薄く、雨が降らず、乾燥した環境が適しているからだ。
まさに人が住めない究極の大地、南米チリの標高5千メートルの砂漠地帯であるアタカマ高地にあるのが、世界最高性能の電波天文台「アルマ望遠鏡」だ。
このアルマ望遠鏡を使った、新たな発見が相次いでいる。国立天文台は昨年12月、アルマ望遠鏡を使った研究成果を発表し、観測開始から5年で500を超える発見があったと明らかにした。
そのひとつで注目されるのが、地球以外の宇宙での生命の起源の探索だ。昨年9月には、うみへび座の方向にある地球から175光年離れた恒星の周りに、海王星と同じくらいの重さの惑星がある可能性が高いことを発表した。ほかにも、太陽系のような惑星系ができる場所を数多く観測しているのだ。アルマ望遠鏡とは──。
2001年から国際共同プロジェクトとして計画がはじまり、11年から観測を開始。現在ではアメリカ、日本、欧州などから世界22カ国が参加している。
望遠鏡といっても、レンズのついた筒状のものをのぞくわけではない。直径7~12メートルの巨大アンテナを使い、天体が発するさまざまな電波をキャッチするのだ。アルマ望遠鏡では、山手線内ほどの広大な敷地に66台の巨大アンテナが広がり、ひとつの「望遠鏡」として働いている。
アンテナのひとつひとつは移動式。観測計画に合わせてトラックに載せて動かすが、1台動かすのに半日かかる。これらのアンテナ間の最大距離は16キロメートルにも及ぶ。
●宇宙の謎を解き明かす
「空気中を電波が透過しやすく、アンテナを広げられる広大な土地があることが、アタカマ高地を選んだ決め手になりました」