と国立天文台チリ観測所助教の平松正顕さんは説明する。
天体から届く電波を、少しでも正確にとらえたい。そのためには酸素が薄く、乾燥しているのが好条件だ。電波が空気中を透過しやすく、アンテナでキャッチしやすくなるからだ。
電波天文台の建設計画を進めていた1990年代、日本の天文学者らはチリのほかにもインドやチベットなど世界中で約20カ所を調査し、条件に合う場所を探し求めた。その結果、アタカマ高地の共同プロジェクトに参加することを決めた。
だが、日本から行くことは簡単ではない。飛行機3本を乗り継ぎ、砂漠地帯を車で2時間以上走って、ようやく最も近い人口約2千人のオアシスの街に着く。
天文学者らが観測拠点としている、標高2900メートルにある山麓施設までは街から車でさらに40分。合計40時間以上の長旅だ。
さらに66台のアンテナが広がる山頂施設は、夏でも雪が降る極限環境。
「夏にあたる2月は山頂施設で雪が降るなど天気が崩れやすいのですが、それ以外は好条件で観測ができます」(平松さん)
アルマ望遠鏡は、遠くにある天体のひとつひとつをくっきりと見分けられる、視力の良さが特徴だ。これまでの同種の望遠鏡に比べて100倍の解像度を誇る。
●生命の起源となる物質
その視力の良さをもって、太陽系や銀河系の成り立ちなど宇宙の謎を解き明かそうと観測を続けている。中でも力を入れているのは、生命の探索だ。
宇宙で生命の起源を探る研究は、米航空宇宙局(NASA)が「アストロバイオロジー」と名付け、00年ごろから注目を集めるようになってきた。アストロバイオロジーの研究を進める東京薬科大学教授の山岸明彦さんはこう話す。
「かつては、地球は生命が存在する特別な天体と思われていましたが、最近では、実は生命は他の天体や宇宙にありふれた存在だと考えられるようになってきました」
考え方が180度変わったのだという。