2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。“聖地巡礼”“パワースポット”がにぎわいを見せ、神様が身近にあふれる。3・11から6年、一人ひとりがそれぞれの形で宗教と向き合う時代。日本の宗教にいま、何が起きているのか。AERA 1月16日号では「宗教と日本人」を大特集。
かつて笑いとともに、宗教はあった。ドリフターズの「神様コント」や「オレたちひょうきん族」の「ひょうきん懺悔室」などに登場する「神様」が、お茶の間に笑いも授けていたのだ。神様コントを手がけた放送作家の重鎮、田村隆氏に当時の思い出を語ってもらった。
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「ドリフ大爆笑」という番組の人気ネタのひとつ「神様コント」は、演者である志村けんさんと加藤茶さんを交えた雑談で出てきたアイデアです。それより前に「シャボン玉ホリデー」という人気番組で、仙人のような神様に扮した青島幸男が、願いごとをしに来た谷啓に厚かましいと文句を言うようなコントがあって、「あれはもっと面白くできるよね」と誰かが言い出したような記憶があります。
●頼りにならない神様
仲本工事さんとゲストが神社を訪れて願いごとをすると、志村さん扮する神様が登場するという筋書き。さまざまな宗教に神様がいる中で神社に設定したのは、どこの町にもあって子どもにも身近な存在だからです。
ところがここの神様はヨボヨボのじいさんで耳も遠く、実にみすぼらしい。「あなた神様ですか?」の問いに、「とんでもねえ、あたしゃ神様だよ」と返すのが定番です。会話がまったく成立せず、参拝者があきれて帰ってしまうと、神様は「年は取りたくないねえ」と嘆息し、若返りたいと神頼みする。
すると今度は加藤さん扮する別の神様が降りてくるのですが、こちらもまったく頼りにならない。神々しくて頼もしい神様じゃ面白くもなんともないから、ギャップを狙いました。
衣装は演者が決めることが多く、分厚い丸メガネにボサボサ頭という姿も志村さんのアイデアでした。神様なんてだれも見たことがないから難しかったけれど、今思えばあれは(俳優の)左卜全さんにヒントを得たんじゃなかったかなあと思います。