この神様は、別のコントにもいろいろと登場しました。人間ができないことをさせられるので便利なんですよ。いきなり登場して場の雰囲気を一変できるのでオチにも使いやすく、作家にとってもまさに「神様」でした。キリスト主催のクリスマスパーティーに神様が勢ぞろいするというコントや、お坊さんが木魚をたたきながらジングルベルの歌詞でお経を唱えると、怒ったキリストが登場するというのもありました。

 当時、ドリフのコントには山のようにクレームは来ましたが、下品だとか子どもの教育に悪いといった声が大半で、宗教を扱うことに対するクレームはほとんどありませんでした。われわれ制作側はとにかくウケるものを作りたかったし、クレームがくるのはウケている証拠だとポジティブに捉えていました。

 今だったら神社に関係する人たちが苦情を言ってくるかもしれないし、あんなコントはもう絶対にできないでしょう。「オレたちひょうきん族」でも、太ったキリストが懺悔する人に水をかけるというコントがあったけれど、あれは「モデル」があるだけにもっとマズイでしょうね。宗教というデリケートなテーマを笑いにするなんて、今のテレビではタブーかもしれません。

 当時でも「日本人は宗教におおらかなので、コントにはなるべく日本の神様を」という配慮はありましたが、同じ時期にアメリカのバラエティーショーを見て驚いた記憶があります。

●太った天使で大ウケ

 大物歌手が歌う背後をワイヤでつるされた小さな天使が横切り、それがどんどん大きくなっていって、最後には天使に扮した太ったコメディアンが登場して観客は大ウケするんです。昔は欧米でも意外とおおらかだったのかもしれません。

 何でも「炎上」する現代では、お笑いの幅は著しく狭くなってしまいました。笑いの舞台に神様が登場することはあまりないかもしれない、そう思うと少し寂しい気がします。(ライター・森田悦子)

AERA 2017年1月16日号

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