「公正とは英語でジャスティス。正義という概念が入っています。正義とは最も不幸な人の利益を最大にするもの」という哲学の考えがあることを説いた。そして、現在は「国民のためのあるべき税制」よりも「選挙で勝てる税制」になっていると訴える。「税の集め方(税制)、税の使い方(予算)、 税の決め方(議会)、税の徴収(行政)は公正かどうか、“日本株式会社の株主”として、モノ言う株主になりましょう」
現在の社会福祉は困っている人だけを選んで助ける「選別主義」。これでは自己責任論や分断、租税抵抗が生まれやすいという。
「私たちが目指すのは“普遍主義”。すべての人の保育、教育、医療、介護などを保障し、共生や連携が生まれる社会を目指したい。今の日本は、税の使い方は選別主義で、集め方は普遍主義です」
また、津久井やまゆり園での殺傷事件にも触れ、
「容疑者は障害者に税金を使うのは無駄だという趣旨の発言をしていたそうですが、本当にそうでしょうか。本来、税金は弱い立場の人のためにあるのです」
こうして2時間半の講義はあっという間に経過し、
「税金を取られるのではなく、税金を託すことのできる社会を私たち市民の手でつくっていきましょう」
と締めくくった。次回開催は来年3月28日を予定している。
税の仕組みを知り、納税することで、市民から「声」が上がり、やがて世論となって、財政や税のあり方を問うことにつながる。税金カフェは、その第一歩だ。(ライター・内山賢一)
※AERA 2016年12月19日号