官尊民卑の傾向が強い地方都市で「公立」ブランドは魅力的だ。何より授業料が約半額の53万5800円に下がった。劇的に下げられたのは、経費が地方交付税交付金、つまり国のお金で手当てされるからだ。同大のように理系だとその額は学生1人当たり約170万円にも上る。地元自治体は、国から受け取った交付金を大学に渡すだけで、自らの負担はない。

 今、経営難の地方私大がこの公立化で復活する事例が相次いでいる=地図参照。12月6日には、千歳科学技術大学が北海道千歳市に公立化の検討を要請したばかりだ。

●できる努力は全てした

 公立化を「学生、大学、自治体それぞれにメリットがあるウィンウィンの仕組み」(関係者)とみる向きもあるが、そこには国のカネという視点はない。

「国民の税金で赤字大学が救われるのはおかしい、という批判があるのは承知しています。でも本校には地元にとって存続させる意義があるんです」

 山口東京理科大の森田廣学長はそう強調する。東芝で長年、ビジネスの現場にいた森田学長や教員らが経費削減や外部資金の獲得に努め、高校にも足しげく通ったという。

「できる努力はすべてやりました」(森田学長)

 山陽小野田市の成長戦略室によると、公立化の話が持ち上がったのは2014年。当初、単科大学のままでの公立化には反対する声もあったが、それをかき消す「秘策」が繰り出された。

 地元の医療・製薬業界が、かねて強く要請していた薬学部新設だ。薬学部に1学年120人を受け入れれば、6学年で720人が新たに通うことになる。今ある工学部の800人と合わせれば、1500人規模だ。

「人口6万人余りの市にとっては大きい。さらに薬学部で女子学生が増えれば、町も活性化する。大学を核とした地方創生のモデルにしようということで一気に話が進みました」と成長戦略室の大田宏室長は打ち明ける。

 安倍政権が掲げる「地方創生」が、地方私大の公立化を進める強力な追い風になっている。しかし、こうした動きについて、ある大学関係者はこう明かす。

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