中国、トランプ、北朝鮮、日本を取り巻く環境がきな臭くなっている。専守防衛に徹し、海外に展開できる装備は持たない自衛隊。安保法とトランプ大統領の誕生で、どう変わろうとしているのか。AERA 12月12日号では「自衛隊 コストと実力」を大特集。最新兵器から出世レース、ミリメシまでいまの自衛隊に密着している。
米次期大統領が日米安保不要論を叫び、「積極的な武器使用」を認められた自衛隊が海外で活動する時代が来た。日本を守るのは誰なのか。元防衛相、石破茂氏が、不安視されている日米同盟について語った。
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ドナルド・トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まり、「日米同盟はどうなるのか」という心配の声が上がっています。
でも、国家安全保障担当の大統領補佐官に指名されたマイケル・フリン氏は、極めて日米同盟に理解がある人物。トランプ氏が選挙戦で訴えた「在日米軍駐留経費をもっと出せ」なんていう奇想天外なことにはならないでしょう。
アメリカが日本を防衛する義務を負い、日本はアメリカに基地を提供する義務を負うというのが日米同盟。いま問題なのは、「どんな時に米軍が活動し、どんな時にしないのか」がよく見えないことです。裏を返せば、「自衛隊がすべきことは何なのか」について、日米間で突き詰めた議論を継続していません。
日本では、自衛隊制服組が国会で答弁することはありませんが、そんな国は、世界でもあまりないと思います。戦車や戦闘機、潜水艦など、具体的な軍事力についての議論も恒常的には行われていない。これは、国会がシビリアンコントロールの役割を果たしていないということだと私は思います。
軍事的合理性について突き詰めた議論をしないのは、最後はアメリカが何とかしてくれるという気持ちがどこかにあるからではないでしょうか。そんなふうに根拠もなく過信することはとても危険です。
一方で、日米同盟のあり方を見直して在日米軍を削減し、「自主防衛」路線にかじを切るべきだという議論もあるようです。