ソーシャルメディアを使ったファンへの情報発信や選手参加型のイベント、有名ブランドとのコラボ商品の開発などにしのぎを削るなか、各球団が看板企画に挙げるのが「ユニホーム」だ。かつて、ファンが着用するグッズと言えば「野球帽」が主流だったが、いま目立つのは、応援するチームのユニホームを着たファンの姿。「カープ女子」や「オリ姫」などと呼ばれる若い女性も増えた。
前出の大岩さんは、ファンサービスデーに選手とファンが着用する特別な「企画ユニホーム」を各球団に提案してきた。08年以降、楽天、ヤクルトなど4球団の企画ユニホームを手掛け、斬新なデザインでファンの支持を集める。そんな大岩さんが意識したのは、米大リーグだ。
「球場でも街なかでも、好きなチームのユニホームやロゴ入りTシャツを着られる米国の野球文化を日本にも定着させたいと思ったのです」
●世代超えファンに絆を
オレンジなら読売ジャイアンツ、黄色なら阪神タイガース。ユニホームのカラーやロゴは、「アイキャッチ」として有効なツールになる。
「選手は5年、10年で去っていくことも珍しくありませんが、ユニホームやロゴは長く引き継がれます。親子など世代をつなぐ共通の記号になるのです」(大岩さん)
その行き着いた先が、復刻ユニホームということになるようだ。大岩さんは、その魅力をこう表現する。
「復刻ユニホームを着ると、少年期に観戦した記憶が重なり、中高年ファンのノスタルジーをかきたててくれます。デザインやロゴを現代版にアレンジすれば、世代を超えてファンをつなぐこともできます」
大岩さんは、最新の企画ユニホームを手掛けるときも、球団の歴史を踏まえたデザインをさりげなく採り入れることを心掛けている。
ファン目線のサービスと、プロ野球の伝統へのリスペクトが生み出した「復刻ユニホーム」。スリリングな試合とともに、これからもファンの心を揺さぶってほしい。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2016年10月24日号
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