放射線診断専門医の北村直幸医師がいま、熱い視線を注ぐのは、CTやMRIで撮った検査画像の診断を支援してくれるAIだ。

「これがないと不安でたまらなくなりますね。精度はかなりよくなっていますよ」

 と、北村医師は言う。北村医師は、広島県内を中心に遠隔で画像診断を手がける「エムネス」(広島市)の社長を務める。同社は昨年から、画像診断支援システム「CIRCUS(サーカス)」を使い始めた。

 サーカスは、東京大学医学部附属病院が開発を進める、検査画像から病変(病気の場所)を自動的に見つけ出すシステムだ。AI研究の一分野である「機械学習」という技術によって、過去の症例データにもとづいて病変を学習する。機械学習とは、コンピューターが既存のデータから自動的にパターンを学習してルールを見つけ出し、新しいデータが来たときに予測ができるようになること。

 現在、エムネスを含む16の施設で臨床研究が行われ、肺の結節や脳動脈瘤を見つけるための画像診断の支援に利用されている。

「医師が自分で画像を見て診断をして、確認としてサーカスを使うケースが多いようです。見落としたものを、サーカスで検出されると、『助けてもらった』と感じる先生が増えているようです」(サーカスの開発を進める同病院の野村行弘・特任研究員)

 例えるなら、パソコンの編集ソフトで文章を書いているときに、スペルチェックでミスを見つけるようなものだろう。

 画像診断支援システムの導入の背景には、画像を読影して診断できる医師が不足していることがある。一方で、CTやMRIなどの検査機器の普及で、画像検査は急増している。

「たとえば、脳動脈瘤の検査では、一つの症例につき、百数十枚の画像を医師が見て診断します。うちではダブルチェックをしていますが、専門医でも見落としは避けられない」(北村医師)

●脳動脈瘤の自動検出

 もはや人の力だけでは限界だという。そこで北村医師は、機械学習などの画像解析に強みを持つ「エルピクセル」(東京都文京区)に検査画像を提供して、脳動脈瘤を検出する画像診断支援システムの開発に乗り出した。

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