7月には、来日したスウェーデンの演劇家ベーント・ヘーグルンドさんと、俳優で歌手のレーナ・リンデルさんを招いたワークショップを開催。参加を希望した18人の生徒たちが、スウェーデンの俳優たちが行う集中力や想像力、互いの信頼感を高め合うトレーニングを体験した。最後にリンデルさんが言った。
「遊びみたいに思えたかもしれないけど、人間関係を築く上でお互いを知る重要なトレーニングです。ぜひ続けてみて」
3年の河合礼子さんは、
「どれも新鮮であっという間の1時間半だった」
と笑顔を見せて、続けた。
「東京オリンピックではスポーツを見るだけじゃなく、たくさんの経験ができそう。いろんな人たちと交流してみたい」
だが、すべての学校でこうした取り組みができるわけではない。「年間35時間程度」はハードルが高いのではないか。この質問を新宿区立西新宿小学校の清水仁校長にぶつけると、
「特別なことを始めるのではなく、いままでやってきたことを意識づけさせたり、普段の授業で教えている内容にオリンピックの要素を盛り込んだりするだけでも十分です」
時速を学ぶ小学6年生の算数で、陸上男子100メートルの世界記録9秒58を時速で計算したり、中学理科の「力の合成」を考える素材に砲丸投げを使ったりすればいい。オリンピックは、教科の壁を容易に越える最強の教材なのだ。
●「オリパラ応援給食」
西新宿小では清水校長の発案で、月に1度の「オリンピック・パラリンピック応援給食」を始めている。世界各国の料理を給食に取り入れ、その国について紹介、食べた料理を写真に撮って世界地図に貼っていく。学校を訪ねると地図上には、ペルーのロモ・サルタードやタイのガパオ、中東のビリヤニ……。7月はイタリアのアマトリチャーナ。塩漬けにした肉や玉ねぎ入りのトマトソースを絡めたパスタだ。
「月に1度、普段食べないものを食べられる日がとっても楽しみ。4年後の東京オリンピックでは、外国の人ともコミュニケーションしてみたい」
と話す6年の伊澤世奈君。食育とオリパラも相性がいい。
都教育委員会オリパラ教育推進担当課の荒川元邦課長は言う。
「オリパラ教育は20年がゴールではない。64年東京五輪のレガシーが50年の時を超えて残っているように、新たなレガシーを残すことを目指しています」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2016年8月29日号
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