「3Dプリンターを使って、亡くなった家族の生前の姿を小さな人形にするサービスです」

 と、同社社長の古荘光一さん。

 本業は、3Dフィギュア製作会社だ。それが手元供養に参入したきっかけは2年前。交通事故で娘(当時11)を亡くした父親からの依頼だった。

「娘の写真で、フィギュアを作ってくれませんか」

 人間は表情が細かいので技術的に難しく一度は断ったが、父親の強い思いを感じ引き受けた。1枚の写真から3Dデータを起こし、微調整を繰り返し特殊な石膏を固めて着色、4カ月近くかけて作った。完成した30センチほどのフィギュアと対面した父親は号泣した。

「ああ、娘や。帰ってきた」

 父親の姿を見て古荘さんは、今後も必要とする人の依頼は受けようと決めた。

 実際、遺人形を手に取ると、リアルな仕上がりで遺影よりも故人を身近に感じられそうだ。

●遺骨300グラム必要

 こうして昨年7月、「遺人形」としてホームページで公開すると、子どもを亡くした親などから依頼が来るように。同社は4月から、遺灰を専用ケースに入れ、フィギュアに埋め込むサービスにも着手した。

「いずれは、故人の音声も組み込み会話もできるようにしたいと思っています」(古荘さん)

 サービスの多様化が進むのも、手元供養の特徴だ。

 スイスに本社のあるアルゴダンザ社が手掛けるのは、なんと遺骨ダイヤモンド。

「遺骨から人工ダイヤモンドを作り、アクセサリーに加工するサービスです」

 と、日本支社のアルゴダンザ・ジャパン(静岡市)社長の法月雅喜(のりづきまさき)さん。ダイヤは「メモリアル・ダイヤモンド」と呼ばれ、05年に国内でのサービスを開始すると、注文は右肩上がりで現在は年200件近い依頼がある。

 この遺骨ダイヤ、作るのに遺骨は300グラム程度必要。まず遺骨をスイスの本社に送った後、特殊技術で不純物の多い遺骨からダイヤの成分となる炭素だけを抽出。その後、高温・高圧の条件で加工、数週間後には無色透明から深みのある青い人工ダイヤモンドとなる。

「依頼者の9割は女性。若くして家族を亡くした人からの注文が多くあります」(法月さん)

 ここまで弔い方が多様化している背景には、遺骨の保管方法に対する考え方の変化がある。都市部を中心に「遺骨は墓地に納めるもの」という常識そのものが、変わりつつあるのだ。

●宗教は関係ない供養

 埼玉県川口市に暮らす山本正人さん(64)は、2月に95歳で亡くなった父親のために、自宅の床の間に置く「墓」を購入した。

「『山本家の墓』があるのは山口県の瀬戸内に浮かぶ島。墓参りといっても帰るのが大変です」

 買い求めたのが、「ご供養家具」と呼ばれる仏壇と墓の機能を兼ね備えたこの商品だった。上部が祭壇、下部が納骨庫という構造。テレビのニュースで紹介されていたので知っていた。

 母親(93)は「墓」に対するこだわりがなく、むしろお骨をそばに置きたがった。いずれは母親だけでなく、山本さんと妻もこの墓に入り、子どもたちに引き継ぎたいと話す。

「時代は変わったと思います」

 ご供養家具を考案したのは、トータルリビング ユウキ(横浜市)。オーダー家具の生産・販売を手掛けるが、8年ほど前に高齢の顧客の一人から「自分が亡くなった時に手元に置けるお墓ができないか」と相談されたのがきっかけだった。

 コンセプトは、「家の中に置けるお墓」。家の中に墓を置くのは法的にも問題はない。宗教は関係なく、キリスト教や無宗教の人も買い求めていくとか。

 同社社長の小原御郎さんは、手元供養についてこう話す。

「亡くなった方の供養のあり方に、タブーがなくなっていると感じます」

 これからの多死社会を迎え、次はどんな手元供養のサービスが生まれるか。(編集部・野村昌二)

AERA 2016年8月15日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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