こうして14年3月にスタートした「早割」。仕組みはカンタン。事前に500円を支払うだけ。割引率はプランによって違うが、葬儀費用が最大で6万6千円安くなる。有効期間は入金してから30日の免責期間を経て3年間。以降は、再び500円を支払えば、3年間期間が延長されていく。申し込んだ本人のほか、三親等まで保証される。同社にとっても、潜在的な顧客を囲い込むことができるというメリットがありそうだ。
とは言え、生前に死を考えるなんて不謹慎じゃないか。
「一般の方からは、歓迎の声しかありません」(田中さん)
かくして「早割」の売り上げは初年度5千件、2年目は2万8千件。3年目の今年は3万件を超える勢いだという。
大阪市の禾元(のぎもと))初恵さん(67)は1年半ほど前に、高齢の母親(94)のために「早割」チケットを購入した。浮いたお金で姉も含め3人で、1泊2日の温泉旅行に行ったと楽しそうに話す。
「最後に親孝行ができました」
(編集部・野村昌二)
【葬儀ビジネス03】
遺体一人ぶん保冷庫:ガラス張りで故人を外からうかがえる“安置面会”
都市部では火葬場不足が深刻な問題だ。人手不足による火葬場の統廃合、地域住民の反対などで新たな火葬場をつくることが難しいといった事情もある。
墓石などの開発・販売を行うニチリョクはそんな状況に対応すべく、遺体を安置するための「ガラス張り保冷庫」を、6月に行われた業界向け展示会に参考出品した。葬儀社向けに営業展開する予定だが、開発途中であるため価格などの詳細は未定。いわゆる“遺体一人ぶんの冷柩庫”で、小さいスペースでも安置することができる。ガラス張りで故人の様子を外からうかがうことができるのが特長だ。
ひつぎが入る業務用の冷蔵庫はこれまでもあったが、面会という発想はなかった。寄り添いたいという家族の気持ちに応えるために開発したという。
同社は“安置面会”のニーズに応えてきた先駆け。2010年6月には家族葬・直葬専門の式場として神奈川県に「ラステル久保山」を開業し、「遺体安置サービス」を始めた。故人が火葬される前に、最期の一夜を過ごすホテル(ラストホテル)の意で名付けられた。12年には2軒目として「ラステル新横浜」をオープン。ラステル新横浜の横田直彦支配人はこう話す。
「病院で亡くなる方が多いですが、遺体を自宅に運べないことも多い。火葬まで遺体をどこに置くかは切実な問題です」
面会室用のフロアには、シンプルな祭壇があり、故人の入ったひつぎを載せるようになっている。祭壇の向こう側には大きな霊安室がある。ゆっくりと面会したい家族向けには、貸し切りの個室も。家族は24時間いつでも故人と面会することができる。“遺体用ホテル”と紹介されることも多く、利用者は毎年増えており、新横浜と久保山合わせて月平均で50件以上の利用があるという。料金は1日1万2千円で、1時間あたり500円。
同社のサービス以前にも葬儀社が遺体を預かることはあったが、ひつぎを車の中に置いておくなど、丁寧な扱いとは言えないケースも多かったという。(ジャーナリスト・横山渉)
【葬儀ビジネス04】
プラン比較サイト:“情報開示”遅れた葬儀業界 IT化進めて透明性高める
首都圏で葬儀事業を行うアーバンフューネスコーポレーションは7月から、葬儀情報を紹介する情報サイト「葬儀ガイド」をスタートした。
葬儀ガイドには、全国の葬儀社、葬儀事例などが掲載されており、ユーザーは複数の葬儀社の葬儀プランを比較検討することで、信頼できる葬儀社を選ぶことができる。葬儀事例には、実際に行われた葬儀の会場写真が複数掲載されており、故人が好きだった日本酒や花、思い出の品物などが飾ってある様子も見ることができる。