「死=ゴールと考えがちですが、実はそこから『死後』が始まる。亡くなった人とも新しい関係が始まるのです」

 稚子さんが亡き夫との新たな関係の中で得たもの、それは、夫と死別したことでできた経験、活動、そして出会いだ。

「愛する存在を失うことは、同時に何か大切なものを受け取れる最大のチャンスでもある。そう知ることができたのです」

(ライター・中津海麻子)

■悲しみと上手に付き合う6カ条

(1)悲しみも苦しみも「乗り越えるもの」ではない。決して焦らない
 何もできなくても、逆に過活動になっていても、あるいは強い悲しみにさいなまれていても、何とかしようと焦らない。悲しみや苦しみは「乗り越えるもの」ではないことを知る

(2)安心して自分の悲しみを話せる人を見つける
 ときには故人のことも自分のこともよく知らない第三者のほうが楽になることもある。グリーフケアを専門とする医療機関、カウンセラーなど専門家でも

(3)書く、言葉にしてみる
 故人に向けて悲しみや謝罪、ときには怒りを文字にしたり話しかけたり。それに対し故人がどう答えてくれるのか、「亡くなった人の目線」も感じてみる

(4)「食べる」「飲む」という行為を丁寧にしてみる
 少ししか食べられなくても、行為自体を味わう感覚で。音楽を聴くのもいい。「食べる」などの行為に集中することで悲しみを感じる時間に少し隙間をつくることができる

(5)SNSなどから距離を置く
 SNSを通じて伝わる友人や知人の当たり前の日常や言葉が、心に厳しく突き刺さることも多い。お悔やみや励ましもありがたいが、少しの間、情報を遮断した時間をつくる

(6)悲しみを抱えるのと同時に喜びも手にしていることを知る
 大切な人を亡くさなければ出会えなかった人、物事、考え方や、何かしらの「故人とともに生きている実感」など。悲しみと対をなして得られる喜びもある

※金子稚子さんの経験をもとに作成。「死別後半年から一周忌くらいまでの間は、まずはこんなことを意識してみたら」と稚子さん。

AERA 2016年8月15日号

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