石原自身の手によって撮影された映像フッテージは非常に生々しい。総選挙で思うような位置にランクインできず舞台裏で昏倒してしまうもの、身内を亡くし壮絶な思いを抱えながら舞台に立ち続けるもの、遠く異国の地でテロの恐怖とも隣り合わせになりながら活動を続けるもの、あるいは引退し「母」となったもの──AKB48という過去最多の人数を擁するグループならではの、それぞれの人生模様にフォーカスしながら「幸せとは何か」、そして「AKB48とは何なのか?」という根源的な問いに迫っていく。

 その取材先はAKB48を飛び越え、ももいろクローバーZのプロデューサー・川上アキラ、モーニング娘。のプロデューサー・つんく♂、そしてAKB48のスキャンダルをスクープした週刊文春の記者にまでも及んでいくのだ。

 本作のフライヤーにも書かれている「AKB48はあと10年続くのか?」というテーマに対して石原自身が思うところを聞いてみた。

「普通、一代限りで終わるはずのアイドルグループが、メンバーが入れ替わることによって、常に生まれ変わっていくというシステムを持つAKB48自体が壮大な実験みたいなものですから、この先がどうなるかというのは正直、僕にはわからないです。継続させていくというのは、ものすごく困難なことですよね」

 ただ──と、石原は続ける。

「AKB48というグループの意味合いが変わってきていると思うんです。1期生の活躍を見て入ってきた向井地美音みたいな例もありますからね。それぞれの強い想いがこの先もグループを動かしていくんじゃないかと思います」(文中敬称略)

(ライター・小田部仁)

AERA 2016年8月1日号