ゴジラが「何を表現したものか」については諸説ある。ゴジラはいつも日本に上陸することから、第二次世界大戦で戦没した「死者の亡霊」が、祖国への恨みを背に、繁栄をむさぼる戦後日本を襲うのだ、とも解説される。もっとも多く語られるのが、ゴジラは「核の申し子」ということだ。

 東京都杉並区のJR高円寺駅のガード下で、昭和の懐かしいおもちゃを販売する店「ゴジラや」を開いている木澤雅博さん(62)はこう話す。

「水爆実験で目覚めたゴジラは、人類や文明に対する警告だと思います」

 54年11月3日に封切られた初代「ゴジラ」は、海底で眠る太古の怪獣が水爆実験で目覚め東京の街を破壊し、放射能をまき散らすという物語。同年3月、太平洋ビキニ環礁での米国の水爆実験で第五福竜丸が「死の灰」を浴び被曝(ひばく)していた。水爆の恐ろしさ、平和の大切さを観客に強く訴えた。

 木澤さんは、初代ゴジラは怪獣映画ではあるが、日本映画を代表する名作に入るという。

 初代が封切りされた54年は黒澤明監督の映画「七人の侍」が公開された年でもあった。木澤さんは、初代ゴジラはストーリーや美術、キャスティングのうまさなどを総合的に考えると「七人の侍」に匹敵するという。

 メインを宝田明と河内(こうち)桃子が務め、脇を志村喬などが固めたが、そのキャスティングの妙が光ると語る。

「『七人の侍』に登場する個性豊かな侍たちと同じです。いい映画は、役者で決まります。ゴジラも同じなんです」

 今、ゴジラ人気を引っ張るのは、子どもの頃にゴジラを観て育った20代の若者たちだ。

 吉川晃祐(よしかわこうすけ)さん(28)もその一人。今年3月、地元新潟でゴジラ上映会を企画、開催した。

「僕にとってゴジラは元気をくれる存在。どんなに強大な敵であっても、生命力を発揮して敵の怪獣を倒すゴジラの姿を見ると、仕事などで理不尽なことがあっても励まされます」

 と話す吉川さんは、ゴジラは「時代を映す鏡」だという。

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