休日なし、体罰ありなどの“ブラック部活”が横行していることを本誌は報じてきた。
今回は、「強くなれ」という親の願いがブラック化に拍車をかける側面を。
都内でメーカーに勤務する50代の女性会社員の息子が中学時代に所属していたバスケットボール部の顧問は、「壁ドンのA先生」と呼ばれていた。練習中、生徒を壁に押し付け鼻血が出るまで殴っていたからだ。大阪市立桜宮高校でバスケット部の男子生徒が顧問による体罰を苦に自殺した事件が2013年に発覚して以降、少しずつ暴力は減ったものの、暴言や理不尽な要求が増えた。機嫌が悪くなると、何週間も練習をやらせない。
息子が中2の時、対応に苦慮し、同学年の母親に相談したら「ごめんね。私は協力できない」と涙ながらに告白された。聞けば、顧問シンパでもあるキャプテンの親から、保護者会後に体育館裏に呼び出されたという。
「私たち中3の親は毎日練習を見に行ってるのに、あなたたち中2の親はちっとも見に来ない。飲み会にも参加しないし!」
顧問は保護者に練習の見学を奨励していたが、その母親も女性も働いていたため見に行けない。息子たちの話を聞いていると、土日の試合後に必ず開かれる顧問との飲み会も参加する気にはなれなかった。
●子から親のカーストへ
「6割以上の親が顧問を肯定的にとらえるシンパ。その中心は、小学校でミニバスケットをしていて試合に起用される子の親です。ミニバスでは『体罰は勝つためには当然』と受け止められていたようで、顧問の指導法に何の疑問も持たない。中学でバスケを始めた補欠選手の親である私たちは何も言えなかった」
つまり「子のカースト」がそのまま「親のカースト」へ移行。本来子どもの成長を促し健全であるべき部活動が親子の序列を生み、親同士の軋轢も生んでいた。顧問はレギュラー選手の親へは感謝の言葉を繰り出すのに、女性らの談判は無視した。
同じ顧問が担当する女子バスケット部では、数人が途中退部したと聞いた。理由は、「バスケは大好きだけど先生についていけないから」だったという。
顧問に問題がある場合、止められるのは親しかいない場合もある。