映画「わたしの自由について」(西原孝至監督)は東京・渋谷のアップリンクなど全国10カ所以上のシアターで上映が決まっている (c)2016 sky-key factory, Takashi NISHIHARA
映画「わたしの自由について」(西原孝至監督)は東京・渋谷のアップリンクなど全国10カ所以上のシアターで上映が決まっている (c)2016 sky-key factory, Takashi NISHIHARA
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 異論を封じて突き進む安倍政権に「ノー」を突きつけようと、1年前に突如現れたSEALDs。若者を駆り立てたものは一体何なのか。その素顔に迫ったドキュメンタリー映画ができた。

「日本の民主主義は終わりました」

 2013年12月5日。あの「特定秘密保護法案」が強行採決された日、ニュースキャスターの古舘伊知郎は、自身が司会を務めるニュース番組で唇を噛みしめるように語った。その表情は暗く、さながら「民主主義のお葬式」。12年の政権交代後、一貫して「負け」続けているリベラルな政治勢力の失望感を、その「暗さ」は代弁しているようだった。

●謎の数々を種明かし

「負け癖」がついた大人たちの身勝手な「暗さ」。それに真っ向から反発したのがSEALDs(シールズ)(自由と民主主義のための学生緊急行動)だった。「民主主義が終わったんだったら、もう一回、始めればいいじゃないか」。当初、数人から始まった路上のムーブメントは、集団的自衛権の行使を含む「安全保障関連法案(安保法案)」の廃止を掲げ、憲法記念日でもある15年5月3日に始動する。

 そして、その4カ月後には、日本の民主主義の象徴である国会議事堂前に、抗議の声をあげるおよそ10万人の市民が押し寄せるという日本政治史に残る「絵」を作り出すことに成功する。本ドキュメンタリー「わたしの自由について~SEALDs 2015~」は、その一部始終をムーブメントの内側から記録したものだ。

 ひとつの政治スローガンの下に動員をかける旧来の市民運動ではなく、ゆるやかな巻き込み型のネットワークとして存在しているSEALDsの実態は実に謎めいている。毎週金曜日、国会議事堂前に現れたかと思うと、あるときは休日の新宿歩行者天国。またあるときは渋谷ハチ公前の交差点と神出鬼没だ。

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