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 安保法制が注目され、国会前でデモが行われたりと、近年、若者が政治や憲法に関心をもつシーンが増えている。それらの情報はSNSなどで簡単に収集できるが、そんな今あえて、書籍に注目してみたい。今読みたい憲法に関する書籍を、専門家がピックアップした。

■ドキュメンタリー映画監督・森達也さんが選ぶ[国民の義務]に関する3冊

(1)『一九八四年』(新訳版)ジョージ・オーウェル(著)/高橋和久(訳)ハヤカワepi文庫
(2)『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』浅野いにお(著)小学館
(3)『朗読者』ベルンハルト・シュリンク(著)/松永美穂(訳)新潮文庫

 義務とは何か。国家が国民に強いる行為。でも必ず強制されて行うわけではない。人は馴致(じゅんち)力が強い。集団に適応する。安倍首相は徴兵制について質問されるとき、「苦役を強いることはできない」と必ず答えるが、ならばかつてこの国が戦争をしていたとき、兵士となることを苦役と思っていた人はどのくらいいたのだろう。この3冊の共通点は、自由意志の脆さと怖さだ。

■ジャーナリスト・永田浩三さんが選ぶ[憲法論議]に関する3冊

(1)『加藤周一を記憶する』成田龍一(著)講談社現代新書
(2)『断片的なものの社会学』岸 政彦(著)朝日出版社
(3)『アンチヘイト・ダイアローグ』中沢けい(著)人文書院

(1)知の巨人・加藤周一に近づくための書。加藤が戦後まず向き合ったのが天皇制だった。(2)「普通」とは? 「マイノリティー」とは?寛容さが失われる現代をめぐる珠玉の断想。(3)ヘイトスピーチと改憲思想とはどこが重なるのか。日本の民主主義の何が問題なのかを、気鋭の論客陣がスリリングに追及。

■『永続敗戦論』などの著者・白井聡さんが選ぶ[憲法論議]に関する3冊

(1)『「憲法改正」の真実』樋口陽一・小林 節(著)集英社新書
(2)『日本国憲法の誕生』古関彰一(著)岩波現代文庫
(3)『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治(著)集英社インターナショナル
「左折れの改憲」の主張も出てくるなか、いま「改憲か護憲か」を論じるにふさわしい政治状況はそもそも存在するのか。(1)はこの疑問への回答である。改憲論議の前にいかなる状況下で現行憲法が生まれたのかを熟知すべきである。(2)、(3)はその手引となる。

(ライター・田沢竜次)

AERA  2016年5月16日号より抜粋