阿蘇大橋の崩落現場。切れた道路の先には、つい先日まで橋があった。道路の向こうの山まで続いていた(撮影/編集部・直木詩帆)
阿蘇大橋の崩落現場。切れた道路の先には、つい先日まで橋があった。道路の向こうの山まで続いていた(撮影/編集部・直木詩帆)
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 2度の「震度7」を観測した本大地震。この激震は「次の地震」に影響を与える可能性があると専門家は指摘する。

 東日本大震災以降、「次にくる大地震」の筆頭とされていた南海トラフ地震。30年以内の発生確率は60~70%と非常に高い。今月1日、研究者をヒヤリとさせる出来事が起きた。三重県の紀伊半島沖でM6.1の地震が観測されたのだ。

 ここでは、近年はほとんど地震が起きていない。フィリピン海プレートが陸側のプレートの下に沈み込む場所で、普段はプレート同士ががっちりくっついているからだ。そこが動いたとなると、巨大地震の始まりかもしれない。過去の地震は、この場所から破壊が始まっていた。

 いまのところ事態が大きく動く様子はないが、京都大学の西村卓也准教授は言う。

「この場所にひずみがたまってきている一つの指標ではある」

 地震の規模は最大でM9クラスを想定している。経済への影響は、コンビナートが津波で破損、流失するなど、生産・サービスの低下によって30.2兆円、東海道新幹線や高速道路の破損など交通の寸断によって4.9兆円と内閣府は試算している。

 地球のプレートが動いている限り南海トラフにはひずみがたまり続け、その「解放」は必ず起こる。問題はそれがいつどのようなパターンで起こるかだ。

 過去の事例では、最初に東側の東海地域で、次に連動して西側の南海地域で地震が起きていた。東西の発生間隔は、ほぼ同時ともいえるわずかな時間差から、数日、数年まで。海洋研究開発機構(JAMSTEC)地震津波予測研究グループの堀高峰さんは、

「やっかいなのは、東海と南海が時間差で起きるとき。これで終わりかと思ったら次の大きな地震が来るというのが怖い」

 確かに今回の九州・熊本大地震でも、前震の後、自宅に戻ったところに本震が起き、被害に遭ったというケースが少なくなかった。JAMSTECは、紀伊半島沖の海底に地震計や水圧計を設置し、陸上とケーブルでつないでリアルタイムで変化を観測している。緊急地震速報や遠方からの津波をキャッチするのが第一の目的だが、南海トラフ地震の微小な兆候をとらえ、連動するタイミングを判断する材料になるという。

 地震の予測でいま注目を集めるのは、地震の発生を早めたり、最後の引き金になったりする「トリガー」の存在だ。

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