
サラリーマンの人生を、好転も暗転もさせる「人事」。その人事がより大きな波乱を起こすのは、企業合併などで異なる企業カルチャーが一つになるときだ。
50代の女性は、大手メーカーに勤めていた。所属していた部署が分社化し、子会社だったエンジニアリング会社と合併した。同じグループといえども、かたや大企業、かたや中小企業。採用も別だし、それまで受けてきた研修や教育などもまったく異なった。
女性は合併して初めて、こんなにレベルの差があるのかと驚いた。技術的なスキルの差もあるが、いちばん問題だったのは対人コミュニケーションやマナーだったという。一言で言えば、ガラが悪い。
「タバコを吸ってはいけないところで吸ったり、打ち合わせなのにケンカを売っているような口調でどなったり。仕事うんぬんの前に、人としてなっていない感じがありました」
合併の際にポストの削減や降格はなく、前所属での肩書がそのまま引き継がれた。そのため、出身母体がどちらの会社かによって、同じ肩書の社員でも能力に大きな差が生まれた。子会社出身の課長には、クライアントとの打ち合わせを数分前にドタキャンする人もいて、そのたび、クライアントには女性が苦し紛れの説明をして対処した。
「よくあれで課長が務まるなと呆れ返りました」
企業合併で生まれるのは、人間関係の亀裂だけではない。昇格、昇進。描いていたキャリアプランが、会社都合で覆されることもある。
メーカーの営業部に勤めていた40代の男性はある土曜日、日経新聞をめくって驚愕した。大きな記事ではなかったが、自社の名前が目に飛び込んできた。
「◯◯社、△△事業を□□社と統合」。自分の所属する部署の事業だった。