子育て中に親の介護を担う「ダブルケア」に直面する人が増えている(※イメージ)
子育て中に親の介護を担う「ダブルケア」に直面する人が増えている(※イメージ)
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 子育て中に親の介護を担う「ダブルケア」に直面する人が増えている。核家族化、晩婚、女性の晩産化の進行によって広がってきた現象だ。子育て期が遅くなり、親の介護時期と重なったという事例は、ときどき耳にするだろう。実際にダブルケアに直面した女性を取材した。

 首都圏に住むトモミさん(仮名)には、小学3年生の長男がいる。 3年前に義父が他界した。ひとり暮らしになった義母は、すでに認知症が進んでおり、翌年から夫の実家で同居して見守ることになった。

 だが、夫は仕事で帰宅が遅い。義母はすでに嫁と孫のことも認識できない状況だった。義父がいなくなってから精神的に不安定になった義母は、攻撃的な発言が増え、特に夜になると、長男がいる目の前でトモミさんを怒鳴りつけた。2カ月もすると、長男は物音がするだけで、「怖い、怖い」と怯えた。トモミさんは、子どもを安心させようと、「大丈夫だよ。『寝たふり大作戦』しちゃおうか」と電気を消して、2人で掛け布団を頭からかぶって寝たこともあった。

 幼稚園のママ友には、介護のことは話しづらかった。思い切って介護者が集う場に参加して、不安や思いを吐き出したこともあるが、逆に子どもの心配については、共感を持って話し合える相手が見つからなかった。

 そこで役所の児童相談窓口に電話をしたところ、アドバイザーには認知症の知識がないようで、適切な助言を得られなかった。続いて、介護相談窓口にも電話をかけると、「あ、それは児童相談窓口へ」と言われて、話は打ち切りになった。

「育児と介護という二つの領域にまたがる問題は、縦割り行政だと対処できないんでしょうか……。たらい回し状態で、どこにも相談先がありませんでした」とトモミさんは言う。

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