アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はソニーの「ニッポンの課長」を紹介する。
* * *
■ソニー デジタルイメージング(DI)事業本部 DIアプリケーション設計部門 統括課長 下川僚子(39)
デジタルカメラをいかに使いやすくするか──それが下川僚子の仕事だ。液晶画面に表示される設定メニューなど操作画面の仕様の考案から、ソフトウェア開発まで手がける。
ソニーのデジタルカメラといえば、一眼の「α」シリーズやコンパクトの「サイバーショット」。その使い勝手に直結する部分だけに、試作機で入念にユーザーテストを繰り返し、製品へと仕上げていく。
もともと「α」シリーズはコニカミノルタのブランドだが、2006年にソニーが事業買収。部下30人の中には、コニカミノルタの出身者もいるが、
「カメラに対する知見の深さや情熱を尊敬しています。メンバーがそれぞれの得意領域で力を発揮し、課のアウトプットが最大になるように導くことが私の仕事です」
大学院で情報工学を学び、00年にソニーに入社した。02年からカメラの開発一筋だ。
理系ばかりの職場にはロジックを重視する空気が漂う。自分自身、上司に何か命じられたときは、「それはなぜ必要なんですか」と納得できるまで説明を求める。
「自分が納得できないことは、仲間に伝えられないし、伝えたとしても逆に『それはどうして?』と聞かれるから」
上級アマチュアやプロ向けの「α7」、続く「α7II」の開発では、課長として開発チームを束ねた。看板ブランドの新機種の開発とあって、発売日まで眠れぬ日々が続き、「投げ出したくなるほどつらかった」。
支えたのは、日本屈指のエンジニア集団の一人であるという「誇り」。数百人のエンジニアの力を結集してつくったカメラは、世界の人々や風景、そして時代を切り取る。
課長になって2年。
「これからはこのチームで新しい製品を提案し、つくりあげてみたい」
と下川。ファインダーの向こうに見る「次」は、いまは秘密だ。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2015年5月18日号