俳優六角精児さん(52)ろっかく・せいじ/兵庫県出身。劇団扉座の旗揚げメンバー。ドラマの「電車男」や「相棒シリーズ」などで人気に。ギャンブルなどで抱えた1千万円近い借金を40代で完済 (c)朝日新聞社 @@写禁
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俳優
六角精児さん(52)
ろっかく・せいじ/兵庫県出身。劇団扉座の旗揚げメンバー。ドラマの「電車男」や「相棒シリーズ」などで人気に。ギャンブルなどで抱えた1千万円近い借金を40代で完済 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 七転び八起き。いつも順風満帆とはいかないから人生だ。逆風の中で見えるものもある。ドラマ「相棒」でおなじみの六角精児さんは、自身を人生を振り返りこう話す。

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 ギャンブルに狂って、結構な借金を背負い、離婚も3回しましたが、幸いなことに、周りにちゃんと僕のことを考えてくれる人、救いの手をさしのべてくれる人がいたんです。信用もなくして、当時は崖っぷちだと思いましたが、いま振り返れば、決して全部の財産を失ったわけではなかったんですね。

「貧すれば鈍する」というように、人は苦しい状況だと自分のことしか考えられなくなります。でも、僕はいろんな人、特に違う世界の人に会ってみる、というのを、ずっと心がけてやってきたように思います。人に会うのって、お金がなくてもできますしね。

 自分なりに人のためになると思うことを続けていくというのも大事ですよ。例えば、自分に友人が悩みや本音を打ち明けてくれたとするじゃないですか。そういう時って、その人の人間性というのがよーくわかる。だから、その人に本当に必要なものや、本人が得意なものは何なのかを一生懸命考えて、自分なりにアドバイスしたり、動いたりする。それを繰り返していると、今度は自分が困った時に、駆けつけてくれる人が現れるようになる。

 人のためにしたことは、いつか必ず自分に返ってきます。そう信じて生きていったほうがいいですよ。そんなキレイごとって言われそうですけど、世の中、キレイごとも事実としてあるんですよ。

 自分が大変な時でも、人のことを考えておくというのは、格差社会では、実は一番難しいことなのかもしれませんけどね。今は何でもコンピューターで検索して、わかったような気になれますが、人とつながるのって簡単なようで難しい。本当の意味での人と人とのつながりが失われているように思います。それも格差社会の要因になっているのかもしれません。

 人を信用するのも一種の賭けですよ。基本、人間は何を考えているかわかりませんから、非常に不安。でも、そこは見極めていくしかない。僕は堕ちていきながら、それを学んでいったように思います。

AERA 2015年5月25日号より抜粋