いま、名古屋大学に熱い視線が注がれている。2001年以降の日本人ノーベル賞受賞者13人中6人が、名大の関係者だったからだ。
08年にノーベル物理学賞を受けた小林誠氏、益川敏英氏は理学部、14年に同賞を受けた天野浩氏は、工学部の卒業生。08年に化学賞を受けた下村脩氏は理学部に研究生、教員として所属していた。01年化学賞の野依良治氏と14年物理学賞の赤﨑勇氏も、教員として在籍している。
00年以前の受賞者はほとんどが東京大学、京都大学の卒業生だったが、01 年以降で言えば京大の卒業生は野依氏、赤﨑氏、現職の教員としては益川氏、山中伸弥氏(神戸大学卒、12 年医学生理学賞)の4人。東大卒が小柴昌俊氏(02年物理学賞)、南部陽一郎氏(米国籍、08年物理学賞)、根岸英一氏(10年化学賞)の3人。北海道大学卒と東北大学卒がそれぞれ、鈴木章氏(10年化学賞)、田中耕一氏(02年化学賞)の1人ずつ。名大が他大学を圧倒している。
研究機関としての大学を評価するために使われる指標には、論文被引用数、「ネイチャー」「サイエンス」への論文掲載、科学研究費補助金(科研費)、企業などからの外部資金があるが、これらのベスト3は東大、京大、大阪大学で、この30年、不動の地位を確立している。
名大はいずれのランキングでも、東北大などに抜かれて5、6位に甘んじているのに、ノーベル賞で結果を残せたのはなぜなのか。同大学の松尾清一総長はこう話す。
「古いしがらみにとらわれず、教員同士、教員と学生の関係がとてもフラット。ベテラン教員のもとで、若い人たちが自由にのびのび研究に打ち込み、議論する文化が生まれ、それを今日まで脈々と受け継いでいるからでしょう」
名大の前身、名古屋帝国大学は、1939年設立。いわゆる旧7帝大のなかでもっとも歴史が浅い。「古いしがらみ」と無縁なのは、最後発ゆえか。50代半ばでノーベル賞学者となった天野氏は、「純国産」として大いに注目された。
※AERA 2015年4月27日号より抜粋