消費税の増税によって実施される「社会保障と税の一体改革」は、これまで高齢者に偏っていた社会保障を「全世代対応型」にし、「すべての世代が受益を実感できるようにすることがねらい」とされている。2015年度予算では、待機児童対策などの「子ども・子育て支援」に5127億円を計上。これまで財源確保が難しかった子育て支援にようやく光が当てられた点は画期的だ。

 ただ、「若い世代の支援」=「子育て支援」という構図の中では、子どもを持たない人たちが「受益を実感できる」とまで言えるだろうか。財務省主計局の端本秀夫主査はこう説明する。

「世代間・世代内の公平を図ったのが今回の改革。子どもがいない人には直接的な受益が増えるわけではないが、消費税の引き上げ分がすべて社会保障の充実に回るので、負担は誰もがすることになります」

 かつて日本では、少子化対策や結婚奨励のために独身にのみ課税する「独身税」の案が浮上したことがある。子どもがいない人も将来、年金や介護の給付を受けることになるのだから、そのときに支え手となる次世代を育てるために応分の負担をしましょう、という考え方。それに近いという。

 財務省の試算では、消費税が8%のもとで各世帯が年間に「負担」する社会保険料や税金と、医療、子育てなどで「給付」される額を比べると、子どもがいない夫婦は「負担」のほうが多く、子どもがいる夫婦は「給付」のほうが多くなる。

 子どもがいれば、保育所利用料や教育費の一部が公費でまかなわれ、児童手当が給付され、自治体による医療費助成などもあるからだ。小学生の子どもが2人いれば、その受益は年間162万円にもなる。

AERA 2015年4月20日号より抜粋