フィギュアスケートの魅力にはまり、テレビ観戦はもちろん、大会観戦のために海外にも赴く――そんな情熱的なフィギュアスケートファンは、自らを「スケオタ」と呼ぶ。彼女らは、フィギュアスケートのどこに魅せられたのか。
近年高止まりしている、フィギュアスケートの人気。チケットを取るのも大変だ。早道は、チケット先行販売、ツアー企画や情報提供を行うスケートの会員制ファンクラブ「アイスクリスタル」に加入することだが、バンクーバー五輪後は、会員になることすら難しい。職員によれば、
「応募数が多いため2014年度から抽選にした。会員の総数は8千人前後に抑え、毎年退会した人数分だけ新規募集している」
2月中旬に締め切られた15年度の新会員募集は、300人の枠におよそ6千人の応募があった。当選確率は5%……。
スケオタを題材にしたコミックエッセーも2冊発売され、自身もスケートファンの漫画家・グレゴリ青山さんの『スケオタデイズ 戦慄のフィギュア底なし沼』(KADOKAWAメディアファクトリー)は発売2カ月で3刷1万6千部。1カ月後に出た『フィギュアの時間です☆』(朝日新聞出版)も好調だ。
なぜ女子は、こんなにもフィギュアにはまるのか。青山さんは二つの要素を挙げる。
「他のスポーツと違って誰かと戦うわけじゃない。フィギュアは基本的に己との戦い。選手が自分の人生の物語を演じているように見える。たとえ転倒しても、次、頑張れ!って思う。未熟だった選手が成長していくのを見る楽しみもある」
物語といえば、鈴木明子は摂食障害から立ち直ったし、高橋大輔にはケガとの壮絶な闘いがあった。羽生の流血事故をものともしない気迫のフリーには賛否はあったが、彼らの演技はその生きざまと重なりドラマチックに観客へ届く。これが、スケオタたちの母性本能をくすぐる。
この心理は、力士を幕下から応援する「相撲女子」や、自前で2軍から若手を育てるプロセスを楽しむ「カープ女子」といった昨今の女子ムーブメントにも通じるものがある。『フィギュアの時間です☆』を編集したスケオタ道30年超の「Kさん」は、ブームの背景に「情報ツールの発達」を挙げる。
衛星放送の普及で海外の試合も見られるし、SNSでファン同士はおろか選手とも情報交換できる。グーグルの翻訳サービスを使えば、海外の選手のツイッターに返信もできる。
「衣装、音楽、技術、採点など、重箱の隅をつつける話のネタが満載で、フィギュアにはもともと、オタクになりがいのあるカルチャーがある」(Kさん)
※AERA 2015年3月30日号より抜粋