作家、「もしドラ」の作者
岩崎夏海さん
(46)
東京芸術大卒。作詞家の秋元康さんに師事。「AKB48」のプロデュース等にも携わる。近著に「部屋を活かせば頭が良くなる」ほか(撮影/高井正彦)
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 生活の中で何気なくしている「部屋の片づけ」。だがそれで、人生が変わったと話す人もいる。

 片づけで「自分は生まれ変わった」。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の作者の、岩崎夏海さん(46)の実感だ。200万部を超すロングセラーになったこの本で、「僕の人生は、完全に変わった」。その根底には、部屋自体の「生まれ変わり」があったという。
 
 30代の時、親が出て空き家になっていた3LDKの庭付きの一戸建てで、一人暮らしを始めた。ひと部屋が本や雑誌に埋もれ、また別の部屋もモノに侵食され…。気づけば「開かずの間」だらけの、身動きのとれない家に変貌していた。

 職場に近い場所に住もうと、2005年、37歳の時に渋谷の18 平米のワンルームマンションに引っ越した。狭いので仕方なく、本は10冊程度、服は着る数枚に「ドラフト会議」。しばらくすると、厳選したモノだけの部屋で暮らしているのが気持ちいいことに気がついた。苦じゃないので、出がけにササッと掃除機をかけるのが日課に。自然と、好循環が生まれていた。

(1)帰宅したら、いつもきれいな部屋に出迎えられる→ウレシイ
(2)維持できるよう、掃除がしやすい部屋に変えたい→掃除の動線にあわせて家具を配置し直す
(3)キレイな部屋が、当たり前に

 という具合に。そんな折、師匠でもある作詞家の秋元康さんのもとから独立することを決めた。40歳だった。その時、全身全霊で書いたのが『もしドラ』だった。

「実家と秋元さんという、二つのくびきが取れ、小さくも整った部屋を手に入れたことで、自分の中に、自信のようなものが生まれて。あえて後ろ盾をなくしたことで、捨てるものがなくなり、勝負しようという気になっていたんだと思います」

 岩崎さんは今、モノの詰まりをなくして部屋を生かす「ヘヤカツ(部屋活)」を提唱している。

AERA  2014年11月24日号より抜粋

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