イスラム国の実態については、謎めいて、恐ろしく、残虐なイメージが先行して広がっている。それなのに、イスラム国の3万人の戦闘員のうち半分は外国人とされる。どうして若者はイスラム国に引きつけられ、戦いに身を投じるのか。

 宗教と社会心理の関係に詳しい宗教学者の島田裕巳さんは、そこに「イスラム国とオウム真理教との共通性が認められます」と指摘する。

「オウムには洗脳というイメージがありますが、信者は勧誘ではなく、自発的に入信しました。イスラム国も同様で、大半は自発的参加者です。オウムもイスラム国も急速に拡大して勢いを持ち、過激化しました。また、オウムは非常に情報発信が巧みでしたが、イスラム国もネットの活用に長(た)けているなど類似点はかなり多いと思います」

 これまでアルカイダに代表されるイスラム過激派といえば、時々怪しげなビデオを流すぐらいで、プロパガンダにはほとんど興味を示さない集団だった。「少数精鋭の暗い秘密主義」に対し、イスラム国は来る者は拒まずというスタンスで、どこかオープンで明るいというイメージ操作をしている。

 戦闘シーンや訓練風景から、イケメンのムジャヒディンが傷を負った仲間の兵士を見舞うところなどまで、多種多様な宣伝ビデオを作っては、どんどんユーチューブにアップしている。画質もハイクオリティーで、下手なドキュメンタリー映画より巧みに作っている。若者へのアピール力は他のイスラム過激派を圧倒する。オレンジ色の服を外国人の捕虜に着せて処刑するあの映像も、ハリウッド映画「セブン」の一シーンに似せているとの説が強い。

 いま、日本の若者が日常に「退屈」や「閉塞」を感じていることは間違いない。ネットの発達で情報はあるが、自分を「未知なる外部」に解放してくれる「逃げ場」がどこにもないと、島田さんは指摘する。

AERA 2014年10月27日号より抜粋