人目を引くコバルトブルーの屋根瓦とウロコ模様の白塗り壁。エントランスから玄関へと続くタイル敷きのアプローチの脇には季節の花々が植えられ、手入れの行き届いた南欧のパティオ(中庭)を彷彿させる。バルコニーに配された幾何学模様の鉄柵が全体の柔らかな印象をシャープにまとめあげている。
個性的な外観で人気を博す「秀和レジデンス(以下、秀和)」。1960~80年代に建てられた「レトロ物件」であるにもかかわらず、現在も入居率は高い。秀和の数々のマンションをつくってきた会社はもうなく、今後秀和が増えることはない。その熱狂的なファンは「秀和マニア」と呼ばれる。なぜ人はこのヴィンテージマンションに惹かれるのだろうか──。
東京都内で住宅設計やリフォーム、シェアハウスの運営など不動産業を営む「Style&Deco」代表取締役社長の谷島香奈子(36)は熱烈な秀和マニアの一人。2年前、好きが高じて秀和の賃貸・売買に特化した不動産サイト「秀和レジデンスマニア~I LOVE SHUWA~」を立ち上げた。谷島は秀和の魅力を「立地の良さ」「管理の良さ」「個性の際立つデザイン」と断言する。
「東京の都心でマンションを購入する場合、新築であれば最低5千万円は覚悟しなければならない。場所にもよるが中古の秀和であれば、その半分程度の資金で手に入れることができる」
3年前、自身も東京都心に60 平米の中古物件を購入。リノベーションを施した2LDKで現在、夫と1歳になる双子の兄妹の子育てに奮闘している。入居者の3分の1は同じ子育て世代。ママ友の多くが秀和の魅力に惹かれて入居した“同志”だ。
「子どもという共通項以外で価値観を共有できるので、自然と仲間意識が芽生え、安心できるのが不思議です」
(文中敬称略)
※AERA 2014年5月19日号より抜粋