ひと昔前なら、「おいしくない」「冷えている」が定番だった給食が激変している。地元の特産品を使うだけでなく、おいしさにもこだわり、食への関心を高める工夫が満載だ。
名古屋から南へ私鉄で約1時間。三河湾に面した「西尾」に着いた。駅に置かれた地域特産品のパンフレット類の豊富さを見ただけで、この地の食材の豊穣さがわかる。「一色のうなぎ」「さかな広場」「抹茶」等々。
これらを生かした給食のメニューを開発しているのが、市立西尾中学校の栄養教諭・冨田直美さんだ。同中に赴任して3年目から「あったらいいな、こんな給食」という食育の授業を展開している。地元産大豆でできたおからを使った「地元野菜の照り焼きつくね」は生徒が考えたメニューをアレンジした。「抹茶大福」も地元業者と給食用に開発した。
「家庭科の授業の中で生徒に地元の食材を使ったメニューを考えてもらいます。カロリーや栄養価の計算だけでなく、地元産の食材の豊富さを子どもたちにも知ってほしいからです」
取材当日のメニューは、2年3組6班が考えた地元産の人参やレンコンが入った豆腐ヘルシーハンバーグ、三河湾でとれるニギスのお吸い物、抹茶アイスクリーム。アイスは溶けないように、給食が始まる時間に調理員が各教室に配っていた。
「おいしいね」「自分たちで考えたメニューだから、家よりもたくさん食べられる」と、子どもたちも嬉しそうだ。毎日、残飯のチェックをしているが、この取り組みを始めてから、残飯量も減ってきたという。
さらに冨田さんは、こうしてできたメニューを近くの道の駅で販売したり、弁当にしたりして売り出そうとも考えている。
「西尾の市民のみなさんにも、この地の食材の豊かさを知ってもらいたいからです」
※AERA 2014年2月10日号より抜粋