経済的自立のためには、子どもの頃からの「金融教育」が大切だ。専門家らもその必要性を指摘しており、また学校では面白い取り組みを行っているところもある。
小学校に入学すると子ども同士で出かける機会が増え、お菓子やおもちゃなど欲しいものも具体的になってくる。おこづかいやお年玉でまとまった金額を手にするようになるのもこの頃だ。アベノミクスで給与が上がると期待される一方で、消費税増税が家計に重くのしかかる。子どものお金の使い方は、決して些細な問題ではない。
学習指導要領では、小学1年生の算数で習う計算は、十の位までの足し算、引き算。それ以上の金額の大小まで理解が及ばない子どもに、お金の使い方をどう教えればよいのか。
日本銀行内に事務局を置く金融広報中央委員会によると、マネーの「早期教育」は必要だという。小学校入学前から低学年にかけては、お金の基本的な役割を知り、金銭感覚の「土台づくり」に最適な時期。この年齢でも「お店屋さんごっこ」などを通して、お金は品物と交換できることや、買ったものを大切に扱う意識を身につけることができるという。
「金融教育というと『金儲けの教育』と誤解されがちですが、お金について教えることをタブー視するのではなく、お金の価値を知り、大切に使うことをきちんと教えることが必要です」(委員会事務局主任企画役の橋口和さん)
学年が上がると、塾通いなどで日常的に現金を持ち歩いたり、友達にお菓子をおごったりする場面も出てくる。おこづかいの額の差によってトラブルやいじめが起きることも。
東京都東村山市立回田(めぐりた)小学校では、11年度から全学年で消費者・金融教育に取り組んでいる。低学年の授業は、物を大切にする姿勢を身につけることから。2年3組では担任の金子直子教諭が、クラスの落とし物を次々と黒板に貼り付けていった。
「えんぴつ 50円 17本 850円」
落とし物の価値をお金に結びつけるのがねらいだ。総額3050円。「もったいない!」と児童から声が上がった。
家庭の事情や価値観によっておこづかいの与え方や金額に差があるため、公立小学校で金額の価値を一律に教えることは難しい。回田小の曽我部多美校長は言う。
「価値観が異なる家庭の子どもたちが集まるからこそ、集団教育の意義がある。子どもたちは自分と異なる意見を吸収したうえで、自分なりのお金の使い方を見いだしていくはずです」
お金に対する先入観がなく、金額の大小にとらわれないまっさらな時期こそ、マネー教育を始める最適な時期なのだ。
※AERA 2014 年2月10日号より抜粋