あんなふうにはなれない。大手サービス会社で10年働いたCさん(34)は、均等法世代の40代の女性上司を見てずっとそう思ってきた。成果にシビアで、結果を出すためにあらゆる手を尽くす。自分にも厳しいが他人にも厳しく、部下を叱り飛ばすこともよくあった。
「均等法世代の女性は、普通の人は結婚か出産で退職し、会社に残るのはスペシャルな人だけ。あそこまではできません」
Dさん(37)が勤めている大手IT企業では、女性役員や女性部長は珍しくない。育児休業も時短勤務もとれ、出産しても会社を辞める女性はほとんどいない。その恵まれた環境が、逆にDさんを悩ませている。
「均等法世代の女性が、後輩女性のモデルになろうという気概をもってバリキャリ道を用意してくれた。でも私はそこに進みたくなくて……」
同期の女性は、均等法世代に倣うバリキャリ派、気後れのユルキャリ派に二極化している。Dさんも入社当初はバリキャリに憧れ、昨年プロジェクトマネジャーに就任。しかし不況下で任されるのは、人員も予算も削減される一方の「貧乏プロジェクト」ばかり。「安くして」と言う顧客と「これ以上は安くできない」と言う会社との板挟みだ。一つのプロジェクトで成果を上げ、さらに金額の大きなプロジェクトを任されて役職を上げるのが「出世の花道」だが、理想とはほど遠い現実。これ以上の昇進には躊躇してしまう。