
ジャズ・ファンにこそ聴いてほしい!
FRANZ KAFKA’S AMERIKA / DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
今や「時の人」と言うべき存在となった菊地成孔。コンサートのチケットは早々に売り切れ、テレビやラジオ、雑誌でも大きくフィーチュアされている人気者の菊地だが、いわゆる「ジャズ・ファン」に、彼のCDはちゃんと聴かれているのだろうか?
菊地が1999年に結成したバンド「デートコースペンタゴン・ロイヤル ガーデン」(DCPRG)は、70年代マイルス・バンドの方法論を採り入れ、複雑なポリリズムと即興のアンサンブルを遠慮会釈なくステージ上で展開するくせに、満場の若いクラウドたちが熱狂して踊り狂うという、信じられない光景を現出させてしまうバンドだ。しかし、ジャズ・ファンたちの、このバンドに対する反応は憤りを覚えるほどに鈍い。アンサンブルと即興の重層的なぶつかり合いが「ジャズ」なのだとすれば、これほど「ジャズ」な音楽は他にあまりないというのに!
この新作は、シンプルなベース・ラインの反復の上で、全員がリアルタイムで即興を行い、それを編集作業でまとめる、という手法で録音されているトラックがほとんどで、その即興の見事さが圧倒的にすばらしい。前作『構造と力』(2003年)が、ホーン・アンサンブルのかっちりとした「決め 」が多かったのとは対照的に、ここでの彼らの演奏はかなりの部分が「その場合わせ」の即興なのだと思われる。
管楽器ソロの充実度(特に佐々木史郎のトランペット・ソロが圧倒的だ)、それを支えるリズム・セクションの、ポリリズミックなアンサンブルの美しさ。マイルスの《マイシャ》やキャノンボール・アダレイの《マーシー・マーシー・マーシー》へのオマージュとおぼしい楽曲もあり、2時間があっという間に過ぎてゆく。
ちなみに4月第3週の段階で、このCDは新宿タワー・レコードのインディーズ・チャート(Jポップの!)1位だ。ジャズ・ファンの諸君、DCPRGを我らの手に取り戻せ!
【収録曲一覧】
●DISC-1
1.ジャングルクルーズにうってつけの日
2.(イッツ・ア・スモール)ワールド・ミュージック・ワールド
3.競売ナンバー49の叫び
●DISC-2
1.ワシントンDC
2.1865年 バージニア州 リッチモンド
3.フォックス・トロット
4.花旗
デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン:DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
→菊地成孔を中心に結成されたグループ/1999年~
菊地成孔(conductor,CD-J,key)
ジェイソン・シェルトン(g)
高井康生(g)
芳垣安洋(ds)
藤井信雄(ds)
栗原正己(b)
津上研太(ss)
ゴセッキー(ts)
坪口昌泰(key,syn)
大儀見元(perc)
吉見征樹(tabla)
関島岳郎(tuba)
青木タイセイ(tb)
佐々木史郎(tp)