カルビー欧州・ロシア課長有馬るねさん(38)1998年に日本女子大学を卒業し、カルビー入社。研究開発部門に配属される。社内公募に応じて、2002年からタイの現地法人に出向。12年2月から現職(撮影/今村拓馬)
カルビー
欧州・ロシア課長
有馬るねさん(38)

1998年に日本女子大学を卒業し、カルビー入社。研究開発部門に配属される。社内公募に応じて、2002年からタイの現地法人に出向。12年2月から現職(撮影/今村拓馬)
この記事の写真をすべて見る
浸透力(撮影/写真部・岡田晃奈、切り絵/辻恵子)
浸透力(撮影/写真部・岡田晃奈、切り絵/辻恵子)

 海外進出する企業が増えた昨今、語学力はビジネスマンに必要なものという認識が広まっている。しかし、それは必ずしも英語力というわけではないのかもしれない。

NPO留学協会理事でAJ国際留学支援センター代表の岩﨑宗仁さんは指摘する。

「国際化が叫ばれた時代は2国間のコミュニケーションツールとして英語力が問われたが、いま求められているのは地球すっぽりのグローバル力。英語力だけ養っていても通用しないのは言うまでもありません」

 さらに、ビジネスの舞台は英語圏にとどまらない。

 カルビーの有馬るねさん(38)はタイに赴任当初、タイ語がまったくわからなかったが、現地の社員が技術力を頼ってくれたので、話せなくても仕事はできたという。引き継ぎ中の1カ月間は前任者に通訳してもらい、その後は語学学校へ。英語より先にタイ語のほうを習得した。

 アサヒグループホールディングスの浅井裕さん(41)はイギリスに留学経験があるが、韓国駐在になってから英語を使うことはほとんどない。ビジネスでは通訳を同伴し、部下に飲みに誘われても、深刻そうな話の時は「内容は絶対に他言しないように」と念を押して通訳を伴う。

「e-Education」代表の税所篤快(さいしょあつよし)さん(24)は、英語の提案書を作るのが苦手。海外で事業をプレゼンする際、まず自分がボードを持って身ぶりを交えながら熱く語り、それを見て共感した韓国人やネパール人スタッフに提案書づくりを「丸投げ」する。OECD職員の村上友紀さん(35)が仕事で使ってきたのは英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語……。

「ここまでくると、勢いで何とかするしかありません」

 英語ネイティブでない者同士のコミュニケーションは不可欠で、英語の「絶対性」は薄れつつある。留学協会の岩﨑さんは言う。

「勧めたいのは『留学(留まって学ぶ)』よりも『流学(流れて学ぶ)』。たくさんの人としゃべって対話力を磨き、アウェーの環境に慣れることが重要です」

AERA  2013年12月2日号より抜粋