セイクリッド・グラウンド/デヴィッド・マレイ・アンド・ブラックセイント・カルテット
セイクリッド・グラウンド/デヴィッド・マレイ・アンド・ブラックセイント・カルテット写真・図版(1枚目)| 『セイクリッド・グラウンド/デヴィッド・マレイ・アンド・ブラックセイント・カルテット』
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豪華なメンバーによるオーソドックスだけど味わい深い演奏にぞくぞく
SACRED GROUND/DAVID MURRAY BLACK SAINT QUARTET FEATURING CASSANDRA WILSON (JUSTIN' TIME JUST204-2)

 重量級テナー・サックス奏者、デヴィッド・マレイの新作は、これまた重量級の大ベテランであるドラムスのアンドリュー・シリルを含むカルテットに、2曲でカサンドラ・ウィルソンのヴォーカルが加わるという豪華なメンバーによる作品だ。

 詩人・作家で、アフリカン・アメリカンの歴史を幻想的に描いた大作『マンボ・ジャンボ』などで知られるイシュメル・リードが作詞と解説を担当していて、それによるとこのアルバムは、アフリカン・アメリカンの境遇についてのトータル・アルバムとなっているようだ。

 セシル・テイラーの長年にわたる音楽的パートナーであるシリルが参加しているので、どしゃめしゃのフリーが出てくるか、と身構えたがそんなことはなく、意外なほどにオーソドックスだけど味わい深い演奏が楽しめる。中でも印象的なトラックは、マレイのバスクラリネットが悲痛に語るバラード「バニッシュト」。

 とは言え、実はこの作品の主役はカサンドラのヴォーカルなのだった。2曲とも静かに淡々と歌っているのだけど、じわじわとこちらに伝わってくるものの大きさに圧倒されてしまう。特にアルバムの最後を飾る長いスロー・ブルース「プロフェット・オブ・ドーム」での、"My name is Cassandra,please call me a prophet of doom"という繰り返しにはぞくぞくしてしまいます。

【収録曲一覧】
1. Sacred Ground
2. Transitions
3. Pierce City
4. Banished
5. Believe in Love
6. Family Reunion
7. Prophet of Doom

デヴィッド・マレイ・アンド・ブラックセイント・カルテット:DAVID MURRAY BLACK SAINT QUARTET FEATURING CASSANDRA WILSON (allmusic.comへリンクします)
DAVID MURRAY(ts,b-cl)
Cassandra Wilson(vo)
Lafayette Gilchrist(p)
Ray Drummond(b)
Andrew Cryille(ds)

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