ここ数年、セックスレスの状態に陥る夫婦が増えている。
そもそも、セックスレスとは、どのような状態を指すのか。日本性科学会は、「特殊な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアルコンタクト(ペッティング、オーラルセックスなど)が1カ月以上ない状態」と定義す。
一般社団法人日本家族計画協会の家族計画研究センター所長で産婦人科医の北村邦夫氏の調査(2012年)によると、約4割もの夫婦がセックスレスの範疇だ。しかも、その割合は年々増えている。年齢別には35~39歳が47%と最多で、30~34歳でも36%。セックスに対して積極的になれない理由は、男性が「仕事で疲れている」(28%)、女性は「面倒くさい」(24%)が最多。「出産後何となく」は男女ともに多い。北村氏は、「これらが、“セックスレスの3大理由”」と指摘する。
セックスの意欲が失せるほど疲れる就労環境とは、どれほどのものか?前出の調査の08年版で、セックスレスと就労時間の関係を調べている。セックスレスの男性は63%が週49時間以上働いており、セックスレスでない男性の49%と有意な差があった。一般に、週60時間以上の労働は“過労死ライン”と呼ばれるが、49時間は“セックスレスライン”と言えるかもしれない。
二つ目の理由、セックスが「面倒くさい」と感じる背景には、異性間のコミュニケーション能力が関係しているようだ。
「セックスレス夫婦の44%が、異性と関わることに『面倒だ』と答えていました。セックスレスではない夫婦は29%ですから、その差は大きい」(北村氏)
産後、セックスレスになりやすい原因は、性科学的に説明がつく。産婦人科医でセックスカウンセリングに力を入れている宋美玄医師は、産後のホルモンの変化についてこう説明する。
「プロラクチンという母乳を出すためのホルモンが分泌されて性欲が減退し、性欲を高めるエストロゲンはガクッと減ります。性器の血流も悪くなりがちで、萎縮したり、乾いたり、感度が悪くなったりもします。まるで赤ちゃんが『自分の授乳中は次の子を作らないで!』と言っているような体の変化が、産後の女性に現れるのです」
※AERA 2013年8月26日号