保存食・非常食など地味なイメージが強かった缶詰が、おしゃれで、美容にも役立つ食材と見直されている。缶詰が楽しめる缶詰バーや、惣菜缶など、様々な分野で進化している。
実は缶詰は下ごしらえが済んでいるため、本格的な料理が簡単に作れて、忙しい人にはぴったりの食材だ。そこに目をつけ、缶詰レシピ本も続々出ている。その中に、『缶詰deゆる薬膳。』という本を見つけた。缶詰で薬膳ができ、美しく健康になれるなんて本当なのだろうか。著者で、薬膳アテンダントの池田陽子さんを訪ねた。
薬膳とは、中国の伝統医学(中医学)に基づいた理論で、すべての食材は体のいずれかに必ず作用するという考え方だ。
「今の自分の体は、自分が食べたものが作りだした結果です」
池田さんがこうして食べ物の重要性を強調するのは、自身の体験があるからだ。30を過ぎたころ、肌の衰えを感じ、食を見直そうと薬膳を学んだ池田さん。サバ、イワシ、サンマなどの青魚は「活血」食材で美白に効果があると学んだが、仕事が忙しく、残業を終えて帰るころにはスーパーも閉まり、青魚は手に入らない。買えたとしても調理が面倒で、「青魚を生活に取り入れるのは、非常にハードルが高かった」。
そんなとき、コンビニに並んでいたサバ缶が目に入った。
「缶詰は保存も調理も簡単。さらに、骨もやわらかいのでまるごと食べられるし、一番おいしい旬の時期に詰めているので、薬膳にぴったりでした」
缶詰を食生活に取り入れてから、肌の調子も良くなり、月に数万円かけていた化粧品代は3千円に。肩こりやむくみも改善し、体重も5キロ減ったという。
缶詰の効能を解説してもらうと、青魚は老廃物を洗い流すため美肌に効果あり。ホタテは肌に潤いを与えてくれ、中医学の五臓のうち老化とかかわりの深い「腎」にも効くといい、アンチエイジングに重要な食材だ。カニは血行を促進し、肩こりに効くという。
「いい化粧品を使うより、何を食べるかのほうが大切で、一食一食をエステやサプリ、化粧品だと思って見直したほうがいい。忙しい女性たちこそ、缶詰をうまく使ってきれいになって」(池田さん)
※AERA 2012年11月26日号