秋の訪れは、大学生にとっては就職活動の季節の到来でもある。多くの学生たちはまずスーツを買わなければならないが、最近の“長い就活”を乗り切るためには、見た目はもちろん、さまざまな機能についても考慮する必要がある。

 スーツ専門店のスーツカンパニーが就職内定者1000人にリクルートスーツについてアンケートを実施したところ、次のような声が聞かれたという。

「夏場や湿気が多い日は、スーツが蒸れて汗臭くなってしまう」
「汗、タバコの煙などの臭いがとれない」
「クリーニングに出している時間がない」

 数々の説明会会場を飛び回る学生の一番の天敵は「汗」や「タバコ」などの臭いのようだ。『就活の神さま』『親は知らない就活の鉄則』など多数の就活、キャリア関連の著書を持ち、現役大学生を前に講演活動を行うジャーナリストの常見陽平さんはこう話す。

「学生は就職活動を行うようになって初めて毎日のようにスーツを着ることを体験する。彼らのほとんどがスーツの手入れの仕方などは知らない。しかも1着を着まわしているから、どうしてもシワや汚れ、ひどいときには臭いが気になる学生もいる」

 最近では、学生たちに早くスーツに慣れるようにと、学内で行われる会社説明会であっても、出席する生徒にスーツ着用を義務付ける大学も登場している。

「スーツは、何度も着慣れないとしっくりこないもの。機会を増やさないと、椅子に座るときにスーツに変な線がつかないような座り方や、スーツがキレイに見える立ち方なども身に付きませんから」(常見氏)

 そんな就活生の声を集めて開発されたスーツがある。スーツカンパニーが販売する「THE RECRUIT SUIT」だ。その名もズバリな名前だが、このスーツの特徴は「就職内定者1000人の声を取り入れた」という点だ。

 就活生のための「史上最強のリクルートスーツ」の製作を企画したスーツカンパニーの開発会議の中で「就活のしやすさを追求するには、経験者に聞くのが一番」という声が上がった。そこで今年6月、実際に内定者1000人にアンケートを実施し、内定者の声に対応したスーツの開発に至ったという。

 具体的には、「臭い」対策として抗菌防臭機能、「クリーニングに出せない」という声に応えてウォッシャブル加工や形状記憶加工を施した。1つのスーツに標準で2本のパンツがついくる「スペアパンツ」も、金銭的に厳しい学生にとっては納得の仕様だ。さらに、多くの就活生にとって欠かせないスマートフォンに対応した機能もついている。上着の内ポケットに内蔵された「モバイルフォンポケット」には画面を拭くためのクリーナー付きで、ポケットから落ちにくくするためのシリコンの滑り止めがほどこされている。

 バブル期の頃の就活とは、まったく様変わりした最近の就活事情。このようなスーツの登場は、いかに学生が就職活動に苦労しているのかを物語っているともいえる。スーツの機能の充実はもちろん嬉しいだろうが、就活生にとっては「内定者1000人の声」に対応したという仕様そのものが心強いのかもしれない。

[AERA最新号はこちら]