地震を予知できず、安全宣言を出したイタリアの学者に実刑判決が出た。ニュースは世界中を駆け巡り、日本の地震学者にも動揺が広がっている。
騒動の発端となったのは、2009年4月にイタリア中部のラクイラで起こった地震だ。発生直前に、地震が発生するか否かを判断する「高リスク検討会」が開かれたものの、出席した地震学者や政府防災局幹部ら7人は、事実上の「安全宣言」を出した。
ところが6日後、事態は一転する。マグニチュード(M)6.3の地震が発生したのだ。この地震で「安全宣言」に従ったおよそ30人が死亡したとされる。地震学者らは責任を問われ、過失致死罪で禁錮6年の実刑判決を受けるに至った。
この遙か遠方の事態が、日本に及ぼす影響は決して小さくない。M8程度とされる東海地震の「予知は可能」とされており、多くの地震学者や政府は、その立場を堅持しているからだ。
東海地震の前兆を判断する判定会の委員である加藤照之・日本地震学会会長は警戒する。
「もし、イタリアと同様に、東海地震を予知できないという事態が起これば、世論からの批判は避けられないばかりか、最悪の場合は、刑事罰もありえるということになる」
イタリアの騒動が東海地震の予知に与える影響について、専門家からこんな不安も出ている。
「イタリアのように、科学者が責任を問われるような事態になると、自由にものが言えなくなる。そのことだけは、避けなければならない」
イタリアの問題は、日本の地震予知のみならず、地震学者のあり方についても、大きな問題を投げかけている。
※AERA 2012年11月5日号