「ものをのみ込むのどの力が衰えると、寝ている間に口の中の細菌を含んだ唾液が気管に入り、誤嚥性肺炎を発症する恐れもあります。シニア世代の方は、うがい等で洗面所の鏡の前に立ったときはぜひ舌を動かして、のどを鍛える『舌トレ』も習慣にしましょう」
体内に侵入しようとするものを防ぐことも大事だが、闘う基盤である体の免疫力が低下しないようにすることも重要だ。
「免疫力アップには、軽い運動習慣を持つことです。激しい運動はかえって免疫力を低下させてしまいます。毎日無理なく行うのであれば、1日30分目安のウォーキングがいいでしょう。朝10分、昼10分、夕方10分と分けてもかまいませんので、続けていくことが肝心です」
食事においては、どんなことに気をつかったらいいだろうか?
「ヨーグルトによって腸内環境が整うことは知られていますが、腸内環境が整うと免疫力アップも期待できます。また肺年齢を若々しく保つには、りんごがおすすめです。ヨーロッパには、りんごを頻繁に食べる人ほど肺年齢が若く、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のリスクが低いという大規模な調査結果もあります。りんごの皮に多く含まれているポリフェノールが関係しているのではないかとも考えられています」
またもし体に風邪症状が出始めたときは、重症化しないうちに早めに治すことが大切だ。
「それには鶏のむね肉を使ったチキンスープが役立つという論文があります。鶏むね肉に多く含まれるカルノシンやアンセリンという成分が好中球(白血球の一種)の働きを高め、ウイルスへの抵抗を強めてくれるのです」
ウイルスは、何かひとつ対策を打てば100%予防できるというものではない。
「だからこそ、できる予防対策は何でもすべてやるのです」
新型コロナウイルスの全貌はまだはっきりしていない。また今後どのような展開になっていくのか先行きも不透明だ。しかしいたずらに情報に振り回されて、パニックを起こさないようにしたい。
「パニックを起こすのではなく、“正しく”恐れてください。日常生活の中で自分ができる予防策を丁寧に実践することです。手洗い30秒なんて面倒だと思われるかもしれませんが、その念入りな手洗いによってウイルスを遠ざけられることもあります。今回ご紹介した以外にも今までご自身が風邪やインフルエンザ対策のためにやってきたことを思い出し、体調を崩さないようにしましょう」
※週刊朝日 2020年3月6日号より抜粋