帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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神田神保町の書店街 (※写真はイメージです 撮影/多田敏男)
神田神保町の書店街 (※写真はイメージです 撮影/多田敏男)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「効力感」。

*  *  *

【ポイント】
(1)生きるのが面倒になるのは無力感を持つから
(2)効力感を持てれば生き生きとした気持ちに
(3)自律性の感覚と他者との暖かい交流が必要

「最近、生きるのが面倒になってしまって」という嘆きを患者さんから聞くことがあります。実は私は、生きることに「かなしみ」を感じることはありますが、「面倒になる」という感覚を持ったことがありません。しかし、そのような気持ちを抱いたなら、ナイス・エイジングどころではなくなってしまいます。そういった事態を避けるにはどうすればいいのでしょう。

 そんなことを考えながら、いつも行く神田神保町の書店で本棚をながめていると、『無気力の心理学』(中公新書)という本が目に留まりました。著者は波多野誼余夫さんと稲垣佳世子さん。

 実はこの波多野さんは大学の同級生で、一緒に心理学を学んだことがあります。その後、私は医学部に進み、波多野さんは心理学の専門家になったのです。

 この新書の奥付を見ると初版は1981年1月25日、2018年12月20日に34版、2020年1月25日に改版発行です。30年を超えるロングセラーなのです。

 もちろん、内容がいいのでしょうが、「無気力」というテーマも長年にわたって関心を持たれているのでしょう。私自身は縁がない「生きるのが面倒になる」、つまり「無気力になる」ということが、いかに重要な問題なのかよくわかりました。

 この本では無気力になるのは、無力感を持つからであり、その反対に効力感を持つことが必要だと論じています。

 つまり、生きていても何もできないと感じると、生きるのが面倒になる。逆に周りや自分自身を変えられるという効力感を持つことができれば、生き生きとした気持ちに変わって、希望にあふれた生活を送れるというのです。

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